ヒューマノイドロボットの自律作業の現在地と可能性示す/山善
自動化と自動化の隙間に
今回は山善がヒューマノイドロボットの実証の場を探していたところ、取引関係にあった東京納品代行が手を挙げた。
ヒューマノイドロボットを試験導入したのは、千葉県市川市にある東京納品代行の物流センター。百貨店などに向けて服飾品や日用品などを取り扱う。
同センターでは、ノルウェーのオートストア製の自動倉庫システム「AutoStore(オートストア)」と各種コンベヤー、無人フォークリフト(AGF)などを使って、自動化を進めてきた。今回の対象となった現場では50人から10人まで作業者を減らしたという。
しかし、オートストアで荷物を収容しているコンテナ「ビン」から、仕向け先へ発送する折りたたみコンテナへの詰め替えなどは人手に頼っている状況だ。その作業にヒューマノイドロボットを試験導入した。
東京納品代行の嶋田亮司取締役常務執行役員は「納品代行は、物流の中でも一般消費者に近い領域を担う。扱う物品が多品種かつ少量で作業の機械化がしづらく、自動化を進めても人の介在する現場がどうしても残るが、人手不足で厳しい状況だ。汎用性のあるヒューマノイドロボットならば、そういった作業も自動化できる可能性がある」と期待を寄せる。
実際に導入してみると、プログラミングをしていないのに成功率と対応能力が高いことに驚かされたという。一方、タクトタイムは作業者の4倍以上かかっている。
それでも、現状の能力でも深夜作業や欠員時の補充などを視野に入れられる作業品質の水準と評価する。
「人が働けるのは1日8時間で週に5日だが、ロボットは24時間365日働ける。この点も考慮に入れながら、費用対効果なども検証していきたい」(嶋田取締役常務執行役員)
専門チームで市場開拓
山善は工場自動化(FA)を推進するトータル・ファクトリー・ソリューション支社の中に、「ヒューマノイドロボット市場開発」の専門チームを設けて、同ロボットの活用を進めている。
今年4月には、同社とINSOL-HIGHが業務提携を結んだ。10月には、INSOL-HIGHが主催するコンソーシアム型の「ヒューマノイド・フィジカルデータ生成センター」の構築プロジェクトへの参画も発表している。
今回の試験導入でも基盤モデルがカギとなった。さまざまな作業タスクの基盤モデルを構築するために、人がロボットに教え込み、稼働データを蓄積する拠点となる。2026年の春に稼働予定で、最大50台のヒューマノイドロボットを設置する計画。
INSOL-HIGHの磯部社長は「海外ではシミュレーション上で動作を学習させる方法も流行している。一度に何千、何万という単位で学習できるため効率は良いが、その動作自体があまり人間のように自然ではないことが多い。実際に人が現実空間で教え込んだ方が、作業品質が良い」と語る。
これらのデータを基に基盤モデルが進化すると、当然ヒューマノイドロボットの作業品質やタクトタイムが向上してくる。
山善の北野峰陽ヒューマノイドロボット市場開発担当課長は「大量で高品質な学習データを蓄積できれば、ヒューマノイドロボットの活用でも日本の勝ち筋が見えてくる。人とロボットが共存する社会の実現に貢献したい」と意気込む。
(ロボットダイジェスト編集部 西塚将喜)

