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2018.11.28
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[SIerを訪ねてvol.2]3つの要素で新市場を開く【その3】 /バイナス

上手く回り始めたのはここ3~4年

 商社などと一緒になって新規案件の開拓にも奔走した。教育事業で培った技術をベースに、新しい仕事に積極的に挑戦した。こうしたチャレンジの積み重ねで、自社の技術領域を徐々に拡大した。  下間篤取締役営業部長は「自社の技術が水平展開できそうなマーケットを探し、そこからどんどん顧客層を拡大していった」と語る。  バイナスのSIer事業の特徴の一つに、取引先の業界の幅広さがある。SIer事業に参画したのが08年と業界では後発のバイナスが、幅広い業界と取引できるのは、リーマン時の従業員教育の成果に加え、これまで培った技術の水平展開が奏功したからだ。  渡辺社長は「SIer事業を初めて10年経つが、ノウハウを積むのに5~6年はかかった。事業として上手く回り始めたのはここ3~4年」と述べる。

物流向けの提案を強化

ロボットとAGVを組み合わせたアプリケーション

 こうして学校向けの教育事業とSIer事業の2本柱を確立したバイナス。14年4月に本社工場を現在地に移転し、同年6月には本社工場内にロボットの実証試験ができる施設「R&Dセンター」を設けた。  今後は、既存のビジネスに加え新規事業にも挑戦する。SIerの育成事業もその一環だ。  他には、ロボットと無人搬送車(AGV)を組み合わせたシステムを開発し、ロボットの活用が進んでいない物流業界向けの提案を強化する。  また、つぶれやすい野菜や傷つきやすい食材をつかむのに力を発揮する、触覚センサーを搭載した 独自のハンドもこのほど開発。新たにロボットハンドの製造販売ビジネスにも挑む考えだ。  教育事業もさらに幅を広げ、20年度から小学校で必修化される「プログラミング教育」用に、ロボットのプログラミングを学べる安価な学習キット「クロール」を発売した。  自動化ニーズの高まりに合わせ、既存のビジネスも需要のさらなる増加が見込まれる。そこで約15億円を投じ、本社工場の隣接地に新工場を建設する。18年9月に着工し、19年10月の完成を目指す。新工場の建設で生産能力を強化し、事業のさらなる拡大を図る。

形にできることの面白さ

渡辺社長は「顧客が思っていることを形にできることが面白い」と語る

 バイナスの渡辺社長は、18年7月に設立したFA・ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会)の副会長も務める。  SIer協会の設立に尽力した渡辺社長に最後、「SIerのビジネスの魅力は?」と聞くと「顧客が思っていることを、ロボットシステムとして形にできることの面白さだろう。後は、自動化が社会の役に立っていること」と淡々と返す。  一方で、課題を問うと「当社も含めSIer業界全体として、人が集まらないこと」と渡辺社長。「SIer協会を作ったことでSIer同士の横のつながりができれば、企業ごとに得意な領域を補い合うことができ、人不足の問題も解消できるのではないか」と期待する。

――終わり (ロボットダイジェスト編集部)

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