[SIerを訪ねてvol.2]3つの要素で新市場を開く【その1】 /バイナス
取引先は多岐に
バイナスのロボットFA事業、つまりSIer事業の大きな特徴は、取引先の業界が自動車部品をはじめ電子部品、食品や薬品、農業など多岐にわたることだ。 下間篤取締役営業部長は「当社がSIer事業を始めたのは2008年と後発なので、(自動車の溶接工程や塗装工程などロボットの活用が)成熟した領域ではなく、新たにロボットが活用されそうな領域をターゲットにしている」と説明する。 「特定の顧客に深く入り込んでいるわけではなく、業界を問わず幅広く仕事をしている」と言う。
ビジョンカメラ、力覚センサー、ハンド
具体的には、ロボットの関節部分に使われる減速機と呼ばれる要素部品の組み立てや、電子部品の組み立て、野菜やお菓子の梱包などをロボットで自動化した実績を持つ。 一風変わったところでは、硬貨の整列やソースの空容器の整列、点滴の容器にラベルを貼る工程などもロボットを活用し自動化した。 実はこれらの工程を自動化することはそう簡単ではない。①ビジョンカメラ②力覚センサー③ユニークな(唯一の)ハンド――の3つの要素がきちんとかみ合わなければロボットシステムは上手く機能しないという。 つまり、バイナスの強みは、ビジョンカメラと力覚センサー、ハンドの3つの要素を上手くインテグレートする(組み合わせる)技術にある。これら3つの要素を生かしたロボットシステムの製作を得意としており、これを武器に新分野を開拓する。 例えば、電子部品の組み立てでは、流れてくる樹脂部品に金具を挿入する工程を自動化した。樹脂部品は射出成形機と呼ばれる機械で作られるが、作られた樹脂部品の精度はそこまで高くはない。仮に人が作業をするならば、樹脂部品の精度が悪くても器用に金具を挿入できるが、良くも悪くも指示通りにしか動けないロボットではそうもいかない。 そこでバイナスは、ビジョンカメラを有効活用し、樹脂部品の精度にばらつきがあってもロボットの動作に補正をかけることで金具を挿入するロボットシステムを構築した。
設計は全て自社で
もう一つ、バイナスの強みには、ロボットシステムの構築に必要な工程のほとんどを自社で担える点も挙げられる。一部の組み立ては外注に回すが、設計は全て自社で対応するという。 渡辺社長は「SIer業界では、メカ設計や電気設計などの各工程を複数の企業で分担するケースも多い。しかし、ロボットシステムを納入してから5年や10年経った時に、当時の企業連合がそのまま存在しているかどうかは分からない。一方、当社は基本的に、ほとんどの技術領域にワンストップで対応しているため、当社が構築したシステムの記録やノウハウは全てうちの財産として残る」と語る。
――つづく (ロボットダイジェスト編集部)
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