世界一のソリューションをどこよりも安く【前編】/日本惣菜協会 荻野武AI・ロボット推進イノベーション担当フェロー
協調領域では競合とも協力
――総菜業界にロボットを普及させるため、協会として何をしますか? ヒントは、渋沢栄一にあると考えています。 ――「日本資本主義の父」と称される実業家の渋沢栄一ですか? 渋沢栄一は「公益を追求すること」の重要性を説きました。自らの利益だけでなく、公益も同時に実現する。また渋沢栄一は資本主義ではなく「合本主義」を唱えましたが、それは「公益を追求するという使命や目的を達成するのに最も適した人材と資本を集め、事業を推進させるという考え方」を意味します。これを総菜業界に当てはめるとどうなるか。協会が音頭を取ることで志を共有する企業が集まり、One for all, all for oneの精神で、技術や知識を持ち寄って「総菜業界全体に貢献するソリューションを開発」することが一つのあり方だと思います。利益を得るのは参画企業だけでなく、会員全体であり、非会員も含めた業界全体です。
――普段は競合関係にあっても、協力しあえるところは協力しあうわけですね。 その通り。総菜の味などはそれぞれがレシピを研究し、競い合うことで高め合う「競争領域」だと思います。そうすることで消費者はおいしい総菜を食べることができ、総菜の付加価値が高まることで業界も活性化します。しかし、例えば盛り付け作業はそうではありません。多くのユーザー企業が合本し、投資資本を共同で出しあい、盛り付け用のロボットシステムを共同開発する。そうすれば、1社当たりが負担する開発コストを大幅に下げられ、業界への普及が可能となり、人手不足の解消になります。 ――なるほど。では、そういったことをどのように進めていくのか。具体的な話は後編で伺えればと思います。
――後編へ続く (聞き手・ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)
荻野武(おぎの・たけし) 日立製作所中央研究所でアナログ、デジタル信号処理などの研究に従事した後、国内外の事業部門で多くの新規事業の立ち上げなどを経験。2016 年にキユーピー入社、AI・ロボットなどの現場実装を担当。21年7月より現職。日本イノベーション融合学会フェロー、ロボット革命イニシアティブ協議会WG2食品TC長。