[SIerを訪ねてvol.17]おいしさを生む自動化/なんつね
ライン全体で最適な提案を
「食品の製造プロセスをよく知っていることが、SIerとしての強み」と話す南社長。ある工程を自動化するには6軸の垂直多関節ロボットが必要だとする。しかし、前後の工程をよく知っていれば、上流工程を工夫することで、3軸のロボットで自動化できる場合も多い。 「コストや速さなどを総合的に考え、ライン全体にとって最適な提案をしたい。垂直多関節ロボットを使うか、3軸ロボットを使うか。それを判断するのがSIerの役割」と言う。 垂直多関節ロボットや人型ロボットの方が汎用性は高いが、ロボット自体が重くて大きく、安全柵も必要になるため、なるべく3軸ロボットで対応できるように工夫している。今までに顧客の現場に垂直多関節ロボットやスカラロボットを導入した実績はないが、ロボットシステムを開発する技術力自体は展示会でも示しており、必要な時には多関節ロボットを採用する考えだ。
食品工場の自動化はこれから
「今のところ、食品業界はあまり自動化が進んでいない。人手でやっている部分が非常に多い」と話す南社長。その理由は、肉のパック詰めを例にとると分かりやすい。 消費者の立場で見ると、赤身と脂身がちょうどいいバランスで盛り付けられているパックを買いたい。しかし、ラインを流れてくる肉の赤身と脂身のバランスを瞬時に見極め、おいしそうに盛り付けるのは、現在のロボットでは実現が難しいという訳だ。 とはいえ、今後さらに少子高齢化が進めば、食品工場といえどもロボット導入や自動化の必要性から逃れることはできない。南社長も「ニーズの高度化と需要増大は間違いない」と見る。エンジニアリング事業を通じて技術開発とノウハウの蓄積に力を入れるのは、将来の需要に備える狙いもある。 新型コロナウイルス感染症の拡大により、食品も実店舗で買うだけでなく、ウェブ通販で買うことが増えつつある。「今はスーパーで肉を買う人が多いが、遠くない将来、ウェブで注文すれば、無人の食品工場でスライス、パック詰めされて出荷されるようになるだろう」と南社長は語る。その時に、機械やライン、工場それぞれの技術やノウハウを持っていることは、大きなアドバンテージになる。