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2020.09.25
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[注目製品PickUp! vol.28]目に見えるイノベーション【後編】/B&Rインダストリアルオートメーション「SuperTrak/ACOPOStrak」

産業用ロボット大手、ABBの傘下に

 同社は2017年、産業用ロボットの世界大手、スイスのABBの傘下に入った。それまでABBは制御機器部門を自社に持っていなかった。逆にB&Rから見ると、ABBの既存の業務領域と全く重複がない。  「お互いの企業の持つ資産が、過不足なくかみ合った。今後は相乗効果を生み出していきたい」と小野社長は意気込む。  最近では、昨年の国際ロボット展(iREX2019)で展示したABBのシステムに、B&Rのスーパートラックや制御システムが組み込まれた。デジタルツイン技術を使い、腕時計を組み立てるデモを披露した。

組み合わせで搬送以外の用途も

 欧州では一足先にスーパートラックとアコポストラックの先進的な利用が始まっている。  搬送台の位置決め精度の高さや、他の機械との連携しやすさを生かし、専用装置の一部として使う。  例えば、ボトル型容器へのラベル張り装置だ。搬送しながら、ボトルを回転させてラベルを張る。ボトルを回転させる仕掛けも、アコポストラックの搬送台の動きを利用して動作させる。システム全体の連動のしやすさを生かした。  ボトルの大きさや形状を問わない搬送装置に仕立てた事例もある。アコポストラックの搬送台2台に、爪を1つずつ装着。その2台で搬送物を挟み、一つのグリッパーのように把持したまま搬送する。  その装置にボトルを供給するのは、パラレルリンクロボットだ。前工程からベルトコンベヤーで運ばれてきた、乱雑に置かれたボトルをパラレルリンクロボットでピッキングする。  パラレルリンクロボットもベルトコンベヤーも、ピッキングのためのカメラも、同一のコントローラーで制御できる。

日本から革新を

「イノベーションが起きずに衰退してしまう」と危機感を口にする小野雅史社長

 「本当は日本からも、工夫を凝らした興味深い使用例を出したい。けれども、顧客は欧州の先行事例を追いかけようとする。その姿勢は良くない」と小野社長は憂う。  先行事例として発表されたシステムは、すでに開発が終わったもの。発表後には、次の開発が進んでいる。発表された事例を追いかけるように日本企業が開発を始めても、実は2周も3周も遅れている。  「かつての日本の製造業は、世界の人が驚くような仕組みの物を高い品質で生み出してきた。最近は驚きを生み出しているか。このままの保守的な姿勢では、イノベーション(革新)が起きずに衰退してしまう」と危機感を持つ。

小野雅史社長とB&Rの会社ロゴマーク

 そこで同社は、革新的な取り組みの大切さをイベントなどを通じて訴える。ただ、これまでの製品は産業用PCなどを軸にした、システム関連のハードとソフトが中心。そのシステム上で工夫をしても、目に見える動きが少なく、実感が湧きにくい。  しかし、「このスーパートラックとアコポストラックの発売で手応えが変わった」と小野社長は言う。動きの違いが目に見える製品があると、顧客はその動きを見て興味を持つという。「これからも日本の製造業の意識を変えるような取り組みを続けたい」と小野社長は意気込む。

(ロボットダイジェスト編集部 西塚将喜)

[注目製品PickUp! vol.28]目に見えるイノベーション【前編】/B&Rインダストリアルオートメーション「SuperTrak/ACOPOStrak」

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