• インタビュー
2020.07.14
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新機軸のコントローラー、重視するのは「オープンな協業」/デンソーウェーブ×ベッコフオートメーション

12年にドイツで再会

デンソーウェーブの澤田洋祐ソリューションビジネス推進部長(提供)

――両社は2017年に発表した「双腕型マルチモーダルAIロボット」の開発でも協業しました。そもそも、出会いのきっかけは? 川野 私がベッコフの日本法人を立ち上げる前から、澤田部長とは知り合いでした。ベッコフの社長として澤田部長に再会したのは12年で、ドイツで開かれた制御技術関係の展示会でした。 澤田 その展示会には毎年行きます。制御技術の調査を目的に、12年もドイツに出張し、いろいろな制御機器メーカーに話を聞きました。基本的には現地のエンジニアとのアポイントでしたが、ベッコフだけは日本人が、それも川野社長が対応してくれました。 ――いい機会なので、お互いの会社の印象を教えてください。 澤田 ベッコフは創業者のハンス・ベッコフ最高経営責任者(CEO)のリーダーシップが非常に強い。スピード感があり、決断が非常に早いです。わが社は外部との協業を拒まないオープンな戦略を取りますが、ベッコフとはその点でも合致しました。 川野 デンソーウェーブも含めたデンソーグループ全体の印象ですが、懐が深い企業だと感じています。とんがった部分と大企業の盤石な部分の幅がすごく広いですね。一般論として、大企業は守るべき技術や市場、評判があるため、革新的なことはなかなかできませんが、デンソーウェーブは新機軸のRC9を開発しました。

人手の重要性高まる

ベッコフオートメーションの川野俊充社長(提供)

――新型コロナウイルス禍に揺れる今の景況感は? 川野 わが社はさまざまな業界に制御機器を提供するため、業界によって景況感は違います。工作機械業界では非常に厳しい局面を迎えていますが、医療機器や薬品、食品関係など需要が伸びている業界もあります。 澤田 コロナ禍の影響で営業活動が非常にしにくく、厳しい状況です。しかし、進行中の案件もありますので、そこまで深刻には考えていません。 川野 ロボットの需要は今後、確実に伸びるでしょうね。 ――コロナ禍と共存する「ウィズコロナ」の時代が到来すると、製造業はどう変わりますか? 澤田 確実にリモートの技術が定着すると思います。わが社も顧客のロボットの遠隔保守サービス「ロボットリモートサポート」を始めましたが、お互いに非常にやりやすいです。そのため、今後もリモート関係のビジネスははやるのではないでしょうか。 川野 ブルーカラー(青い襟=作業着を着る現場作業者のこと)とホワイトカラー(白い襟=ワイシャツを着る事務系労働者のこと)の概念が変わると思います。コロナ禍の影響で、人手で何かをすることの重要性が高まり、手作業の工程の価値が見直されています。もはや襟の色で仕事を分ける発想はナンセンスでしょう。また今後は、コロナ禍をチャンスと捉える企業が出てきますが、オープンな協業はこうした企業に非常に合致する戦略です。わが社とデンソーウェーブのように、オープンな協業がもたらすメリットを工作機械などの他の業界でも実感してほしいですね。

(聞き手・ロボットダイジェスト編集長 八角秀)

澤田洋祐(さわだ・ようすけ) 1985年日本電装(現デンソー)入社。92年から産業用ロボットの事業メンバーに参画。2004年デンソー・ヨーロッパに出向。11年デンソーウェーブに出向し現在に至る。愛知県出身。1969年生まれの50歳。 川野俊充(かわの・としみつ) 1998年日本ヒューレット・パッカード入社。2003年カリフォルニア大学バークレー校経営学修士修了。04年日本ナショナルインスツルメンツ入社。07年から慶応義塾大学SFC研究所上席所員。11年から現職。17年から在日ドイツ商工会議所理事会副会頭も務める。東京都出身。1973年生まれの47歳。

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