より軽く柔らかく、ロボットに樹脂部品を/三井化学 田和努ロボット材料事業開発室長
増える採用事例
――樹脂部品の採用は増えていますか? 小ロットの案件が多いですが、引き合いや採用事例は右肩上がりで増えています。産業用ロボットメーカーからの受注もあれば、サービスロボットのベンチャー企業からの受注もあります。12年にロボット材料事業を開始して以来、日本ロボット工業会(会長・小笠原浩安川電機社長)など国内外のロボット関連の団体に入会し、海外では飛び込み営業などもして少しずつ認知度を高めてきました。そうした取り組みが実を結び、現在も複数の企業と開発などを進めています。
――今後採用が進みそうな部位は? 有望なのがロボットハンドです。樹脂は軽量なだけでなく、センサーを埋め込むこともでき、そうした技術を社内に保有しています。触覚の代わりになる力覚センサーや、物が近くにあることを検知できる近接センサーがあれば、物をより器用につかめます。位置決めせずに置かれた物をつかむ場合、今はビジョンセンサーで見て認識するのが主流です。しかしハンドにセンサーを埋め込めば、ビジョンセンサーなしでもつかめるようになるかもしれません。また産業用ロボットや移動式ロボットの表面にセンサーを搭載すれば、軽く接触しただけで止まる、あるいは接触の直前に止めることもできます。 ――ロボットアームの構造材には使えますか? もちろん使えます。ハイエンドの金属製ロボットほどの精度は出せませんが、そこまでの動作精度は必要ない簡単な作業を、従来よりも安価に自動化したいとのニーズがあります。こうしたロボットの構造材に、樹脂は最適です。強度については、自動車に使う場合のデータの蓄積が豊富にあり、さらにロボットに使った場合のデータも今後蓄積していく予定です。
適材適所で組み合わせる
――樹脂だと劣化しませんか? もちろん劣化はしますが、自動車のバンパーに使用されていることからも分かるように、非常に耐候性の高い樹脂もあります。用途に合わせてきちんと選定すれば全く問題ないので、適材適所で使うことが重要です。適材適所と言えば、「大きな負荷がかかる部品は金属で」という選択は間違いではありませんが、そういった部品でも一部を樹脂に置き換えられます。例えば歯車では、負荷がかかり摩耗する歯の表面は金属が最適でも、内側は樹脂に置き換えられるケースもあります。 ――さまざまな部位に使えそうですね。 樹脂は種類によってその性質は千差万別で、アイデア次第でさまざまな使い方が可能です。使い方次第では既存のものとは全く違う新しい製品を生み出せると思います。三井化学は樹脂部品を通してロボットを革新していきたい。ロボットメーカーと積極的に協業していければと考えています。
(聞き手・ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)