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2021.06.23

中東で産ロボ・FA市場急拡大/ABB アナン・ナタラジャン リージョナルマネジャー

欧米や中国、日本などの主要市場に加え、近年中近東・アフリカ市場の開拓にも力を入れるのがABBだ。まだまだ市場規模は小さいが、成長率は世界平均と比べてかなり高い水準という。「特に中近東が好調で、最も伸びているのはサウジアラビア。アラブ首長国連邦(UAE)がそれに続く」とABBロボティクス部門で中近東・アフリカ地域などのリージョナルマネジャーを務めるアナン・ナタラジャン氏は話す。ナタラジャン氏に同市場の現状や展望、今後の取り組みを聞いた。

石油・天然ガスから製造業へ

――中近東・アフリカ、南アジア、オセアニアと広い地域を統括されていますが、特に注目している市場は?
 産業用ロボットや工場自動化(ファクトリーオートメーション=FA)への投資が急拡大しているのが中近東です。最も伸びているのはサウジアラビアで、アラブ首長国連邦(UAE)がそれに続きます。まだまだ市場規模は小さいですが、伸び率は世界平均と比べてかなり高い水準です。今後5年~10年の間、中東市場は経済発展が著しいインドなどと同じようなハイペースで成長するでしょう。

――サウジアラビアと言えば石油産業で、「製造業が盛んな国」というイメージはありませんが……
 サウジアラビアでは石油・天然ガスへの依存度を下げ、経済を多様化させるための国家戦略「サウジビジョン2030」が進められています。振興する対象分野の一つが製造業で、工業大国への発展を目指しています。日系メーカーの進出はあまり多くありませんが、同国では近年、食品・飲料、医薬品メーカーの工場などが次々に稼働しています。国際的に有名なメーカーも進出しています。

――国策として製造業の発展を支援しているのですね。
 またサウジアラビアでは、5000億ドルもの予算をかけて紅海沿岸の砂漠に最先端の未来都市を作る「NEOM(ニオム)」という巨大プロジェクトが進められています。輸出だけでなく国内需要も増加しており、投資も活発です。

安全衛生、生産性、品質を向上させる自動化

中近東などの市場で豊富な経験を持つナタラジャン氏(本人提供)

――日本では人手不足が課題となり、ロボットやFAの需要が伸びていますが、中東の状況は?
 サウジアラビアやUAEでは、以前は労働力を海外からの移民労働者に頼ってきました。しかし近年、人件費が高騰し、労働者の確保も難しくなってきました。そのため多くの企業がロボットやFAに関心を持ち、積極的に自動化投資をしています。

――中東以外の地域はどうですか?
 労働力が安価のため、まだ本格的な普及期ではないですが、今後5年~10年でアフリカでもロボットなど自動化の需要が拡大するでしょう。自動化には、生産性を上げてコストを下げるだけでなく、品質を安定させる効果もあります。アフリカの製造業は、欧米市場が大きなターゲットになります。欧米に輸出するには、安定した品質が必須ですから、企業の自動化に対する関心が高まっています。また、働く人たちも、退屈で危険で汚い仕事ではなく、より安全で価値の高い仕事を志向しています。

――中東・アフリカ市場を深耕するための取り組みは?
 ABBはモロッコ、南アフリカ、エジプト、ドバイに自社の販売・サービス拠点があります。中近東・アフリカにローカルのロボットメーカーはほとんどなく、現地でのサポート体制をこれほど整えている国際的ロボットメーカーも他にありません。現時点でも充実したサポート体制を整え、市場で優位な地位を確立できていますが、この強みをさらに伸ばしたいと思います。

――具体的には?
 ABBによる直接のサービス、あるいは販売パートナーを通じたサービスの体制をさらに強化します。またABBの強みである、デジタル技術を活用した遠隔サービスも積極的に活用します。拠点のない地域でも迅速に24時間サポートが可能です。こうした取り組みを通し、中近東・アフリカ市場でのプレゼンス(存在感)をさらに高めていきます。

(聞き手・ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)




※この記事の再編集版は、設備財や工場自動化(ファクトリーオートメーション=FA)の専門誌「月刊生産財マーケティング」2021年6月号でもお読みいただけます。

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