[5日間の夏期集中講座vol.4]ここだけは押さえたい!産業用ロボットのきほんの「き」/ロボットの構成要素、導入フロー、コスト
ロボット導入のフロー
ここまで産業用ロボットの構成要素や周辺機器、SIerの役割を解説したが、そもそもロボットを導入するにはどうしたらいいのか? 誰にどう相談すればいいのか? 「ロボットを導入したいが、どこから手を付ければいいか分からない」――。こうした悩みを抱える読者もいるかもしれない。そこで、ロボット導入の一般的なフローを下記の通りまとめた。 ①ロボット導入の目的を明確にする ②ロボット関連の情報を収集する ③ロボットメーカーやSIer、商社に相談する ④ロボットシステムの仕様や構想を検討する ⑤契約、発注 ⑥設計、製造、据え付け、調整 ⑦納品、運用開始 まずはロボットを導入する目的を明確にする必要がある。ロボットは汎用性が高く幅広い用途で使えるので、「何となく使いたい」ではなく「この目的で、この工程に、いつまでに、この予算内でロボットを使いたい」との具体的なイメージを持つ必要がある。 とはいえ、現時点で具体的なイメージがなかったとしても、ロボット関連の情報を広く集めれば導入のイメージが固まる可能性がある。そのため、ロボットを導入するうえでは入念な情報収集も欠かせない。 情報収集の手段には、ロボットメーカーやSIerのウェブサイトや、ショールーム、展示会などがある。展示会は現在、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で開催が見送られるケースが多いが、ロボットの実際の動きが見られるので、より具体的なイメージをつかむのに役立つ。産業用ロボットに特化したウェブマガジン「ロボットダイジェスト」も参考になる情報を数多く掲載しているので、ぜひチェックしてほしい。 ロボット導入の具体的なイメージがつかめたら、いよいよ本格的な検討に入る。ロボットシステムの構築には、ロボットメーカーや商社をはじめとした販売代理店、SIerなどの数多くの企業が携わる。ロボットメーカーが製造したロボットを販売代理店が売り、SIerがシステムを構築するのが一般的な流れだ。 それだけに、初めてロボットシステムを導入する場合は「どこに連絡すればよいかが分からない」と悩むかもしれないが、上で挙げたどこの企業に連絡をしても大きな間違いはない。現時点で使いたいロボットの目星が付いているなら、そのロボットのメーカーに連絡すればたいていの場合は販売代理店や協力関係にあるSIerを紹介してもらえる。また、日ごろから付き合いのある商社や販売代理店がロボットを扱っていれば、その企業に連絡してもよい。自社が求めるロボットシステムを構築してくれそうなSIerに心当たりがあれば、そのSIerに直接連絡するケースもある。 導入したいロボットシステムのイメージを伝え、それに対する具体的な提案や見積もり額、導入スケジュールに納得がいけば、いよいよ契約だ。契約後はSIerがシステムの設計や組み立て、製造、据え付け、調整などを担当する。契約通りのものができれば納入となり、ロボットシステムの運用が始まる。
ロボット導入のコスト
ロボットを導入するのに、どれぐらいのコストがかかるのか? サイズや機能に応じてロボットの価格はさまざまだが、小型で安価なものであれば、100万円台からロボット本体を購入できる。しかし、前述の通りロボットは「半製品」で、本体だけでは使えない。ロボットハンドや架台、安全柵、ビジョンセンサーなどさまざまな周辺機器と組み合わせてロボットシステムを構築して初めて機能する。 通常はシステム構築をSIerに依頼するケースが多く、システムインテグレーション費用が別途必要になる。そのため、一般的にはシステム導入費用はロボットの本体価格の何倍にもなる。 ロボットシステムは現場に合わせてオーダーメードで構築されることが多く、費用の相場や平均額は明確ではないが、参考になるデータはある。日本ロボット工業会が2017年に制作した小冊子「ここが知りたい!ロボット活用の基礎知識」では、4つの想定例を挙げてロボット導入のコストを紹介している。 例えば、金属部品を加工する工作機械に加工物を供給したり搬送したりするロボットシステムは総額で980万円かかった。本体の他にはロボットハンド、架台、安全柵、部品ストッカーなどを組み合わせた。全体に占める比率が最も高かったのがシステムインテグレーション関連費で、設計や組み立てなどでそれぞれ費用がかかり、計520万円となった。