真空吸着の提案力を強化/日本ピスコ
空圧関連機器メーカーの日本ピスコ(長野県岡谷市、河西利行社長)は、真空吸着技術を提供する総合メーカーへ着実に成長している。昨年7月に完成させた新たな本社工場をはじめ全国4カ所に設置する「真空吸着テストルーム」には、顧客が実際の搬送対象物(ワーク)を持ち込み、日本ピスコの多彩な真空吸着パッドで搬送作業の自動化を試行錯誤できる環境を整える。自動搬送装置やロボットのエンドエフェクターとしての真空技術は需要が伸びているという。
テストルームは欠かせない
日本ピスコは昨年7月、新たな本社工場を完成させた。そこには「真空吸着テストルーム」も設けた。テストルームで実際に試行錯誤を繰り返し、自動搬送装置やロボットのエンドエフェクターとして使用する多種多様な真空吸着パッドの中から、顧客が搬送したいワークに最適な製品を選ぶことができる。
国内営業を統括し営業副本部長を務める飯澤貴清常務は「顧客が来て、実物を見て、試し、打ち合わせをし、よりスムーズに商談を進めるためにテストルームを作った。顧客は実際に試したいもの。例えば展示会で来場者がおもむろにワークを取り出して『これ吸着できる?』と聞いてくることも、珍しいことではない」と話す。
ワークを吸着できるかを試したい顧客のために、営業担当者が真空吸着パッドや真空ポンプを持参して顧客を訪問し、テストすることはよくあるという。しかし、持参するパッドの数には限りがあり、「AでダメならBを試す」などが容易にできるものでもない。
テストルームには300種類ほどのパッドをそろえ、実際のワークを持ち込んで搬送の可否を試すためのロボットも用意する。本社工場の他、埼玉、名古屋、大阪と全国4カ所の営業所にテストルームを併設した。いずれの事務所も1階になく什器(じゅうき)類に制限があったため、テストルーム併設のために引っ越した。最初にテストルームを併設した埼玉営業所も現在は手狭になり、いずれさらなる移転を考えているという。
「顧客に営業所まで来ていただき、そこですぐにテストができるのが望ましい。だからテストルームを拡充した。真空吸着を提供する総合メーカーとしてさらに成長するには、顧客の要望に応えるテストルームは欠かせない」と飯澤常務は力を込める。
豊富なラインアップで攻勢
同社は独自の流体切り替え技術を核とし、国内でトップクラスのシェアを持つ「ワンタッチ流体継手」をはじめ、豊富な製品ラインアップを誇る空圧関連機器メーカーだ。空圧制御技術は自動車や半導体業界のみならず、産業用ロボットなど幅広い分野で使われている。特に自動搬送装置やロボットでワークをつかむのに使用する真空吸着パッドの需要は伸びており、豊富なラインアップを強みに市場に攻勢をかけている。
同社製パッドのラインアップは多種多様だ。標準品から特殊品まで少なくとも300種類をテストルームにそろえた。搬送装置も、スペースに余裕のある本社工場のテストルームでは助力装置を使用して20kg~30kgの材料袋の搬送もテストできるようにした。
また、真空技術についてのセミナーも開催する。主に顧客ごとのレクチャー形式だが、セミナールームを使った少し大がかりなイベントも開く。「わが社の真空技術のレクチャーだけでなく、顧客の課題にその技術でどこまで対応できるかのマーケティングにもなる。こうした経験を積み重ねることで、顧客の相談に対して最適な真空機器一式を選ぶ選定力が高まる」と飯澤常務は話す。
いずれパッケージ提案も
「搬送装置にとどまらずロボットの採用は増え、また搬送物がより大型化する案件も増えている。そのため大きなワークにも対応できるロボットも導入した」――。そう話すのは、営業本部SIソリューション課の富山篤史主幹。富山主幹は元々生産技術部門にいたこともあり、テストルームに必要な什器や装置の選定、必要に応じた装置の設計・製作などを担当する。「加速度など搬送時の各種条件が数値化できると、顧客の納得感が違う。そのために必要な環境を整えた」と話す。
SIソリューション課は、2023年に開始したロボットハンド設計サービスを起点にしている。はじめ「ロボットハンド・ソリューション・チーム」としてスタートし、現在は4人のSIソリューション課となった。「FAアシスト」をコンセプトとし、自動化のサポートに注力する。顧客からも近年、システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)的な動きへの要望が増えている。自社内での自動化にも積極的に取り組んでおり、その自動化も外販パッケージとして販売することも模索する。
昨年12月12日~13日に愛知県で開催された「World Robot Summit(ワールド・ロボット・サミット、WRS) 2025 AICHI モノづくりロボットチャレンジ」では、日本ピスコの「Team SIS @PISCO」が第1位(経済産業大臣賞)に加え特別賞(ノーマルタスク賞、ベストハードウェア賞)を受賞した。
この大会の課題は、複数種類の日用品を異なるサイズの箱に箱詰めする工程を競技化したもので、システム全体の迅速性・柔軟性・経済性が評価基準とされた。システムインテグレーション(SI)の競技だが、そのチームの主体がSIソリューション課だった。また、この時に披露したシステムは「化粧箱組立ハンド」としてパッケージ化し、販売に至った。「ゆくゆくは同課を中心にわが社のノウハウのパッケージ化を進め、提供したい」と飯澤常務は語る。
課題解決のために協業も
今年6月に愛知県のアイチ・スカイ・エキスポで開催された「ロボットテクノロジージャパン(RTJ)2026」では、「化粧箱組立ハンド」の他にも多彩な真空吸着ソリューションを披露した。
トルクメーターなどを製造、販売するセンサーメーカーのユニパルス(東京都中央区、玉久明子社長)の助力装置「電動バランサ ムーンリフタ」向けに共同開発した「真空グリッパ」も実演披露した。真空グリッパにはコントローラー機能を持たせた。「こうしたアイデアは顧客の声・要望に応えるべく開発を進めた結果」(富山主幹)と振り返る。顧客が抱える課題を解決するために、他社との協業にも積極的に取り組んでおり、同製品はその代表例といえる。
経験や知見を積み上げる
また継ぎ手をはじめ空圧関連のビジネスは幅広いため、ロボットのパッケージ提案などで新たな顧客層も得ながら、空圧関連全般の情報収集や顧客ニーズを直接ヒアリングできる好循環につながる期待も大きい。
「国内営業担当者は60人ほどいるが、専門性には差がある。パッケージ提案は従来の自社ビジネスの枠にとどまらないことから、社内教育も必要になる」(飯澤常務)
真空吸着パッド関連の引き合いや相談は増えているという。特に多いのは食品や包装関連で、テストルームへの持ち込みも増加している。
「パッケージ提案やシステム構築を担うSIソリューション課の仕事を、5年~10年でわが社の柱の一つにまで育てたい。そのためにリソースは当然必要だが、顧客の声をいかに多く拾い集め、課題解決に取り組む経験をいかに多く積み上げられるかが、それ以上に重要」と飯澤常務は先を見据える。
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