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2023.07.26

[気鋭のロボット研究者vol.29]突発的な接触を柔軟に「いなす」【前編】/広島大学 村松久圭 助教

村松久圭助教はロボットの運動制御や独自の移動型四腕ロボットの研究開発に取り組む。前編で紹介するのは、学生時代から研究を続けるロボットの運動制御。従来のロボットは予期せぬアクシデントに対して臨機応変に対処することは難しいが、突発的な接触を柔軟に受け流す制御アルゴリズム(情報処理方法)を確立した。

外部からの衝撃を判断する

 協働ロボットは人や物との衝突など突発的なアクシデントが発生すると、危険を回避するために一時停止してしまい、作業効率を大きく落としてしまうのがネックだった。

 村松助教は、この課題を解決するための方法として「周期/非周期分離制御」を研究する。ロボットの運動制御の場合は、あらかじめプログラミングされた動作を「周期」、人との接触など外部からの突発的なアクシデントを「非周期」と定義する。人とロボットとの接触の感知にセンサーは使わない。「エンコーダーの情報とモーターに与えているトルクの増減から、突発的にかかった力を抽出するアルゴリズムで、外部からの衝撃を判断する」と村松助教は説明する。

「周期/非周期分離制御」はパラレルリンクロボットにも適用できる

 人が接触することでかかった力に反発するのではなく、力が加わった方向に動いて受け流す。その後、すぐにプログラム通りの動作に戻るため、安全性の高さと作業効率の維持を両立する。「制御アルゴリズムを数学的に確立しており、条件さえ変えられれば多様なロボットに対応できる」と語る。

 村松助教は今後の課題として、周期と非周期の境界線の定義を挙げる。「非周期の定義を広げると、周期の運動に影響が及びかねない。そこを突き詰めるのが研究の楽しさでもある」と笑顔を見せる。

――後編に続く

(ロボットダイジェスト編集部 斉藤拓哉)

村松久圭(むらまつ・ひさよし)
2020年3月慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程修了。同年4月日本学術振興会特別研究員。同年7月から現職。日本機械学会会員、日本ロボット学会会員、計測自動制御学会会員、電気学会会員。趣味は映画観賞など。休日にはしまなみ海道をサイクリングすることも。千葉県出身の29歳。

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