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2020.11.25

インタビュー

人材・技術・環境、ロボ普及へ施策出そろう【その2】/経済産業省 石井孝裕ロボット政策室長

2019年に政府の有識者会議がまとめた「ロボットによる社会変革推進計画」。そこで示された施策が本格的に動き始めている。「その1」では全体概要や、施策の一つ目の方向性「導入・普及を加速するエコシステムの構築」について取り上げた。その他の施策にはどのようなものがあるのか。経済産業省の石井孝裕ロボット政策室長に話を聞いた。

未来のエンジニアの育成協議会を設立

――前回は、ロボット普及に向けた施策の四つの方向性のうち「導入・普及を加速するエコシステムの構築」についてうかがいました。二つ目の「産学が連携した人材育成枠組みの構築」とはどのようなものですか?
 「産学が連携した人材育成枠組みの構築」の目玉の一つは、「未来ロボティクスエンジニア育成協議会」(略称CHERSI=チェルシー)です。昨年12月の「2020国際ロボット展(iREX2020)」において関係者間で覚書を締結し、今年6月に正式に設立されました。2年前にFA・ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会)の久保田和雄会長(三明機工社長)と対談した際に、人材の確保、育成が重要だと話し合いましたその時の対談記事はこちらから。あの後、高等専門学校(高専)や工業高校など十数校を回ってヒアリングをしたのですが、ロボット担当の先生方からは「今、産業の現場で使われる最新技術を把握していないので、教えている内容がずれていないか不安」といった声が聞かれました。先生方は大学や大学院を卒業されてすぐに教育現場へ入られるわけですが、その後、第四次産業革命や人工知能(AI)・モノのインターネット(IoT)と連携したロボティクスなどが出てきている。社会・技術が大きく進展していく中で、教育機関の先生方が最新動向にキャッチアップしていく社会的な仕組みがないことが原因です。こうした課題の解決を目指すのがCHERSIです。現在、川崎重工業、デンソー、平田機工、ファナック、不二越、三菱電機、安川電機、FA・ロボットシステムインテグレータ協会の7社・1団体と国立高等専門学校機構、全国工業高等学校長協会、高齢・障害・求職者雇用支援機構の教育機関が参画しています。

昨年12月にCHERSI設立に向けた覚書を締結

――CHERSIの活動内容は?
今回のコロナ禍を受け、活動開始の時期や活動内容に多少の影響がありましたが、現在は、高専や工業高校、ポリテクセンター・ポリテクカレッジの先生向けに、ウェブ研修会や講演会などが開かれています。その他、先生方が企業のロボットセンターを訪問したり、企業のエンジニアが教育現場へ出向いて、ロボットの最新技術や新たな使い方などを教える取り組みも進められています。

――その他に、人材育成に関する施策はありますか?
 「ロボット革命イニシアティブ協議会」で検討し、システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)が身につけるべき技術を体系化した「スキル標準」が17年にまとめられました。日本式のロボットシステムを海外にも広めるため、このようなスキル標準の海外普及を進めたいと考えています。また、「ロボットによる社会変革推進計画」では、システムインテグレーション(SI)に関する技能検定などの創設も目指すべきとされました。今年からSIer協会が始めた「SI検定」の国家資格版のようなイメージです。

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