生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2018.10.15

[創刊特別対談]石井孝裕ロボット政策室長×久保田和雄SIer協会会長【前編】

FA・ロボットシステムインテグレータ協会の久保田和雄会長(左)と経済産業省の石井孝裕ロボット政策室長(右)

2016年に政府が策定した「日本再興戦略2016」ではシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の育成が重点事項の一つとして掲げられ、今年の7月にはFA・ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会)が発足した。会員数100社を目標に設立準備を進めたが、ふたを開けてみれば計144社が参加。その後も入会希望がやまず、9月末には171社まで増えた。かつてないほどSIerへの注目が高まっている。経済産業省の石井孝裕ロボット政策室長と、SIer協会の久保田和雄初代会長(=三明機工社長)に、SIerが果たすべき役割とロボット産業の未来について語ってもらった。

システムインテグレーターに脚光

司会 近年、ロボットシステムの構築を担うシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)に注目が集まっています。

久保田 少子高齢化で生産年齢人口は減少傾向にあり、このままでは国内総生産(GDP)も落ちてしまいます。しかし、産業用ロボットなどで工場を自動化すれば、1人当たりの生産性は2倍にも3倍にも高めることができます。ロボットはそれだけでは使えず、他の装置やハンドなどの周辺機器と組み合わせて初めて稼働できるものです。最適なシステムの提案から設計、必要な機器の製造、組み立て、動作のプログラミングなど一連の工程を担うのがわれわれSIerです。

「SIerはハウスメーカーや工務店のようなイメージ」と話す石井室長

石井 SIerを他の産業に例えると、施主のニーズに基づき、その家に住む方のライフスタイルや動線を考えて家を設計し、さまざまなメーカーの建材や設備を組み合わせ、まさにインテグレート(統合)する、そういったハウスメーカーや地元密着型の工務店といったイメージです。ただし、ハウスメーカーとSIerとの大きな違いは、お互いユーザーとの接点にあるにもかかわらず、ハウスメーカーの認知度は建材メーカーよりも高いのに対して、SIerの認知度はロボットメーカーよりも低いという点です。

久保田 ハウスメーカーとは非常にうまい例えです。

石井
 すでに自動車などロボットが普及している産業もあれば、まだまだ使われていない産業もあります。人手不足で生産性を高めていかなければならない中、ロボットの導入はその解決策の一つです。例えば、「三品産業」と呼ばれる食品、化粧品、医薬品など、ロボットの導入があまり進んでいない産業では、今後、ロボットの導入により人手不足を解決していく必要性が高まるでしょう。そういう観点からも、SIerはますます重要になると考えています。

TOP