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2020.09.04

より軽く柔らかく、ロボットに樹脂部品を/三井化学 田和努ロボット材料事業開発室長

自動車では、適材適所で最適な素材を組み合わせる「マルチマテリアル化」が進む。金属部品を樹脂などに置き換えることで大幅に軽量化でき、燃費が向上する。「ロボットでも今後、間違いなく樹脂部品が増える」――。そう見越してロボット向け樹脂部品の提案に力を入れるのが三井化学だ。同社がロボットに注力する理由とは、樹脂で何ができるのか。田和努ロボット材料事業開発室長に話を聞いた。

「金属の塊」に樹脂部品を

三井化学の樹脂部品が採用されたメルティンMMIの「MELTANT-β(メルタントベータ)」

――ロボット材料事業に取り組み始めたのはいつからですか?
 2012年下期にスタートしました。その頃に機能樹脂事業本部(現モビリティ事業本部)の中で、新規事業に取り組むプロジェクトがいくつか立ち上がりました。その一つがロボット材料事業です。少しずつ実績を積み上げ、16年にロボット材料事業開発室を組織化しました。

――ロボット産業に注目した理由は?
 まず、今後の市場拡大が間違いなかったことと、世界的に見て日本メーカーが強い産業だったことが挙げられます。さらには、「今後樹脂部品の使用が増えるだろう」との見通しもありました。自動車では軽量化のため樹脂部品が増えましたが、ロボットでも軽量化のニーズはあります。また、2013年には協働ロボットが安全柵なしで設置できるようになるなど、人の近くで稼動するロボットが増えつつあります。人の近くで動くなら、安全性を高めるためウレタンなどのクッション材のニーズもあります。ロボットはまだ「金属の塊」ですが、今後は樹脂部品が増えると考えています。

幅広いラインアップから業界ごとに提案

協働ロボット用ウレタンカバー

――ロボット向けの樹脂部品にはどのようなものがありますか?
 例えば協働ロボットの関節部などを覆うウレタンカバーがあります。柔らかいので、人と衝突した際の安全性を高められます。今年の初めにロボット関係の展示会に出したところ好評で、複数の引き合いをいただきました。

パワーアシストインターナショナルのパワー・アシスト・スーツ

 また、パワー・アシスト・スーツの各種部品も製造しています。フレームや、制御機器や駆動機器を収めるケース、背当てのクッション材、表面の布の化学繊維などを全て提供できます。和歌山大学発のベンチャー企業、パワーアシストインターナショナル(和歌山市、八木栄一社長)のパワー・アシスト・スーツには三井化学の樹脂部品が多数採用されています。その他、移動式ロボットの車輪やホイールなども作れます。

「部品として提供できる」と話す田和努ロボット材料事業開発室長

――強度が求められる部品、柔らかい部品、化学繊維など幅広いですね。
 三井化学は、オレフィン、エンジニアリングプラスチック、ウレタンなどさまざまな樹脂を製造しています。そのたくさんの樹脂の中から顧客が求める要求性能に最適な樹脂を選択し、提案する戦略です。例えば自動車なら、バンパー、内装の表面材、外装材、燃料タンク、ドアのシール材、エンジン周辺部品などさまざまな場所に樹脂部品は使われています。これらで蓄積された知見を活用して、ロボットに最適な部品を提供していきます。

――ロボット向けの「部品」を提供できるとのことですが、材料ではなく部品として納入できるのですか?
 当社は、求められる性能に適した樹脂を、顧客が求める部品にして提供しています。また応力解析などにより、そのロボットに最適な形状を設計・提案することも可能です。ロボット部品は小ロットであることが多く、求められる数量に応じた成形方法を選択することも重要な役割です。三井化学なら材料の選定から形状の設計、成形方法の選定、成形加工、部品納入までのソリューションをワンストップで提供できます。

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