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2020.09.08

連載

[注目製品PickUp!vol.27]熟練工の力加減をロボがまねる【前編】/新東工業「ZYXer」

大手鋳造装置メーカーの新東工業は、産業用ロボットなどに取り付けるひずみゲージ式6軸力覚センサー「ZYXer(ジクサー)」を開発。今年4月から量産を開始した。従来の製品に比べて計測の精度が高く、より小さい力の変化を検知できる。繊細な力加減を必要とする精密組み立てや、対象物に倣った動作が必要な研磨、バリ取りなどの作業をロボットに任せられる。「力覚センサーにより力加減を覚えさせれば、ロボットで熟練者の作業を再現できる」と新規事業PJ推進力覚センサ事業グループの田名網克周グループマネージャーは強調する。

過酷な作業から人を解放

 新東工業のジクサーは、産業用ロボットの本体とハンドの間に取り付ける力覚センサーで、今年4月から愛知県の同社新城事業所で量産を開始した。年間で1000~3000個の製造を予定する。ロボット用力覚センサーの事業は昨年2月に立ち上がったばかりだが、すでにいくつかの大手ロボットメーカーのオプションなどで採用実績がある。

 同社調べによると、ジクサーは従来のセンサーに比べ、10倍の精度を持つ。実際の荷重と計測データの差が限りなく小さいため、繊細な力加減が必要な精密組み立てやバリ取り、研磨作業などに活用できる。
 人の動きを覚えさせるだけなら、位置情報だけでも問題はない。しかし、実際の作業は、物を押し込んだりする力加減が重要だ。力覚センサーを利用することで、ロボットは人の動きだけでなく、力加減まで再現できる。「バリ取りや研磨など、過酷な作業や熟練の技が必要だった所から、作業者を解放したい」と田名網グループマネージャーは期待する。

ノイズの少ないひずみゲージ式

ジクサーは6軸を同時に計測する

 ジクサーは縦、横、高さの方向に加え、その3方向を中心に回転する力、計6軸を同時に計測できるため、物の重さや重心などを細かく測れる。
 人工知能(AI)と組み合わせることで、つかむ物の重心を学習でき、より安定した搬送にも貢献するという。

繊細な人の力加減を再現できる(新東工業提供)

 また、計測方法には、タッチパネルなどで利用される「静電容量式」ではなく、内部に設置した金属板が外力によって伸縮する変化を計測する「ひずみゲージ式」を採用。
 静電容量式は、タッチパネルの反応が人によって変わるように、同じように押しても反応が異なる場合がある。実際の力なのか、ノイズなのかも判断しにくく、小さな力の変化が分かりにくい。一方、ひずみゲージ式は低荷重域から高荷重域までノイズが発生しにくく、繊細な力加減も認識できる。

 鋳造装置を製造する新東工業が、なぜロボット用の力覚センサーの開発に取り組んだのか。新しい事業の柱と「これからの日本企業が生き残るためには欠かせないのがセンサーだ」と田名網グループマネーシャーは説明する。

――後編へ続く
(ロボットダイジェスト編集部 渡部隆寛)

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