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2020.07.14

インタビュー

新機軸のコントローラー、重視するのは「オープンな協業」/デンソーウェーブ×ベッコフオートメーション

産業用ロボットや自動認識機器、制御機器メーカーのデンソーウェーブ(愛知県阿久比町、中川弘靖社長)は今年7月、新機軸のロボットコントローラー「RC9」を発売した。最大の特徴は、ドイツのベッコフオートメーションの産業用パソコン(IPC)を採用したこと。RC9の開発ではオープンな協業を重視したが、その狙いは? デンソーウェーブの澤田洋祐ソリューションビジネス推進部長とベッコフ日本法人(横浜市中区)の川野俊充社長の2人にウェブインタビューした(写真は工作機械展「メカトロテックジャパン2019」での両氏の対談時に撮影)。

まさに「一心同体」

新型ロボットコントローラー「RC9」を駆使した統合制御アプリケーション

――今年7月に発売した新型コントローラー「RC9」にはベッコフのIPCを採用しました。
澤田洋祐
 小型ロボットのコントローラーは従来、中央演算処理装置(CPU)とドライバーを一体にしたハードウエアを専用設計するのが普通でした。一方、RC9はCPUとドライバーを分離し、IPCとドライバーをベッコフが開発した通信規格「EtherCAT(イーサキャット)」で連結する構成としました。ウィンドウズとベッコフのリアルタイム制御ソフトウエア「TwinCAT(ツインキャット)」が組み込まれたIPCに、わが社が開発するソフトを実装してロボットを制御します。
川野俊充 デンソーウェーブとはまさに「一心同体」になった心境です。RC9の心臓部にわが社のコア技術が使われるため、制御機器メーカーとして全面的にサポートしますし、何か問題が起こった時もしっかりと対応します。

――従来のコントローラーとの違いは?
澤田
 ベッコフの多種多様なIPCから、RC9の要求スペックを満たすものを選択できます。顧客の用途に合わせ、CPUの性能から拡張性まで自由度の高いロボットコントローラーを構築できるのが特徴です。また、世の中の技術やシステムインテグレーターの技術を融合できるオープン性や、複数のロボットや設備の統合制御などの拡張性にも優れます。

垂直多関節ロボット新製品「VMシリーズ」「VLシリーズ」からRC9が搭載される

――RC9の開発で意識したことは何ですか?
川野
 わが社が提供した製品や技術は全て汎用品です。澤田部長からも「デンソーウェーブ専用のものは一切作らないでほしい」と強く要望されました。
澤田 専用品はコストが高くつきますし、品質低下も招きますからね。あくまでオープンな協業を重視し、排他的にならないよう意識しました。汎用品を採用したのはそのためです。

――RC9は斬新なコンセプトですが、従来の一体型のコントローラーを常識と捉える顧客にはどう提案しますか?
澤田
 常識は最大限に尊重しなければなりません。そのため、顧客に合わせて、アプローチの仕方を変える必要があります。実は、RC9は箱の中に入れた状態で出荷します。箱を開けない限り、内部構造を知ることはないですし、従来のコントローラーと使い勝手も変わりません。一方、選択性やオープン性、拡張性を求める顧客には箱の中身を見せ、機能や特徴を説明します。

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