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2019.12.02

[特集 国際ロボット展vol.6]次の狙いはEMSの組み立て! 合理化のポイントは視覚系にあり/不二越

不二越は2013年に発売した小型垂直多関節ロボット「MZシリーズ」で、電子機器受託製造サービス(EMS)の組み立て工程の開拓を狙う。視覚系が合理化や自動化のポイントになるとにらみ、現在はビジョンセンサーの開発に優先して取り組む。今年12月に開かれる「2019国際ロボット展(iREX2019)」では、新製品を含めたMZシリーズを中心とした展示に加え、新開発のビジョンセンサーも披露する。

売上高は13年比2.5倍に

2013年に発売した小型垂直多関節ロボット「MZシリーズ」

 不二越は日本のロボットメーカーの中では老舗で、1968年にロボット事業を立ち上げてから50年以上の歴史を誇る。
 ロボット事業では長きにわたり、自動車産業向けの大型溶接ロボットなどの拡販に取り組み、業容を拡大してきた。自動車が主要な取引先だったが、2013年に小型垂直多関節ロボット「MZシリーズ」を発売したことで、この構図が大きく変わった。

 MZシリーズのターゲット市場は、EMSや一般産業機械など。伊東輝樹ロボット開発部長は「特に中国のEMS関連から高い評価を受けており、一定のブランド力がある」と強調する。

 自動車産業を中心とした既存の顧客基盤に、こうしたEMSなどの新規顧客を上乗せし、売上高の大幅な増加につなげた。18年度のロボット事業の売上高は13年度比で2.5倍以上に伸ばした。
 米国と中国の貿易摩擦問題などを背景に、19年度は前年度比で微減を見込む。だが、伊東部長は「中国の景気は悪く、新規の設備投資を様子見する動きはあるが、MZシリーズではそれなりに受注が入っている」と話す。

ビジョンセンサーの開発に力

MZシリーズのターゲット市場はEMSや一般産業機械

 同社はMZシリーズを旗艦製品と位置付け、EMSや一般産業機械の市場に攻勢をかける。
 特に取り込みたい領域は「EMSの組み立て工程」。中国のEMS関連の工場は、現状では部品の搬送でロボットを使うケースが多いが、組み立ての単純作業は人海戦術で対応している。

 組み立て作業にロボットを使う場合、ネックになるのが視覚系という。
 一昔前は、からくりを使って機械的に位置決めした部品をロボットが取り出し、組み立て作業をするケースが多かった。だが、部品が変わるたびに機械的な位置決め装置を作り直す必要があった。
 また、こうしたことができる職人や生産技術者は減少傾向にあり、伊東部長は「部品が頻繁に変わっても、職人や生産技術者のスキルに頼ることなく柔軟に組み立て作業ができるよう、ビジョンセンサーを使う」と説明する。

「既製品にはない独自性を出す」とビジョンセンサーの開発方針を語る伊東輝樹ロボット開発部長

 そのため、同社は視覚系が合理化や自動化のポイントになるとにらみ、現在は自社のロボットに合うビジョンセンサーの開発に力を注ぐ。
 ロボットとビジョンセンサーを一体化し、使い勝手のよい自動化システムとして提案する。「既製品にはない独自性を出す」と伊東部長。さまざまなメーカーのビジョンセンサーと組み合わせやすくするため、ロボットの通信接続規格の開発なども同時並行で進める。

 組み立て工程だけではなく、中長期的には目視検査の工程も取り込む考えだ。「ロボット自体が目視検査できるような技術を今後開発したい」と伊東部長は意気込む。

次世代のロボットソリューションを展示

iREX2019の小間のイメージ図

 12月に開催される国際ロボット展では、全体で30ほどのロボットセルを展示し、同社の技術開発の取り組みを来場者に広くアピールする。
 「次世代のものづくりの世界を 人とつながり 共に考える ロボットソリューションを提案する」をコンセプトに掲げた。それを体現する形で、新開発のビジョンセンサーやモノのインターネット(IoT)システムを使ったロボットセルを展示する。

 具体的には、組み立てや検査などを担う複数のロボットセルを連結し、来場者が注文したノベルティーを実際に生産するデモを披露する。一部の工程にビジョンセンサーを使う他、IoT技術を生かして来場者が注文したノベルティーがどの工程にあるかを可視化するという。

 今回展には過去最大の150小間で臨むが、その背景にもMZシリーズがある。
 「新しい分野の展示スペースを確保するのに、既存の自動車産業向けの展示を減らすのではなく小間数を増やす方向で対応する。従来は100小間ほどの規模だったが、MZシリーズを発売した13年以降は回を重ねるごとに過去最高の小間数を更新している」と伊東部長は述べる。
 それだけに、展示製品のラインアップはMZシリーズが主体で、新製品も発表する計画だ。伊東部長は「EMS関連など、攻勢をかけたい市場に向けた展示がメイン。既存の自動車産業向けでも、新しい接合技術などの加工法を提案する」と説明する。

(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)

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