欧州最大のロボット展、過去最多の来場者で盛況【後編】/automatica 2025
製薬業界がターゲット
前編ではスイスのストーブリの製薬業界向けの提案を取り上げたが、ドイツは世界有数の医薬品生産国であり、日本メーカーでも同分野への提案に力を入れる企業が目立った。
川崎重工業は会場で6軸垂直多関節ロボット「MC006V」を初披露した。医薬品の製造現場では、滅菌に過酸化水素ガスなど強い腐食性を持つ薬品を使用する。これに耐える耐薬品性の高い特殊なメッキを施したロボットだ。これまでは4kg可搬の機種を販売してきたが、MC006Vは6kg可搬。「一度により多くの対象物(ワーク)をハンドリングして生産性を高めたいとのニーズに対応した」とカワサキロボティクスEMEAの倉岡修平社長は語る。
同社はインクジェット印刷とロボットの技術を組み合わせた「Direct to Shape Printing System(ダイレクト・トゥ・シェイプ・プリンティング・システム)」も会場で披露し、同展を機に本格販売を開始した。垂直多関節ロボットや垂直昇降機構でワークと印刷ヘッドの最適な位置関係を維持しながら、スピーディーに直接立体物に印刷できる。立体物に印刷するにはいくつかの方法があり、「転写の元になる版が必要で多品種少量生産には向かない」あるいは「曲面に対する鮮明な印刷には高い技能による手作業が必要」などそれぞれ課題があったが、それらを解消した。「版が不要で、また立体物へのモノクロやフルカラーの鮮明な印刷が特殊な技能なくできる。プリンターとロボットの両方の技術を持つエプソンならではの提案」と執行役員の福田俊也IJS事業部長は自信を見せる。
接触前に止まるロボットやリニア搬送システムも
不二越は人などと接触する前にその接近を検知できるロボット「MZS05」を展示した。一般的な協働ロボットは接触すると即座に停止するが、同製品は接触する前に停止する。「協働ロボットは接触して停止すると再起動作業が必要になるが、接触前に停止するこの機種ならそれが不要。欧州では西欧から東欧に工場を移す企業も多く、この機種なら新設工場などロボットに不慣れな現場にも導入しやすい」とナチヨーロッパの稲熊大輔ゼネラルマネジャーはメリットを説明する。アームへの接近を検知するセンサーとは別に周辺エリアを監視するレーザースキャナーも搭載し、周囲に人がいない時は高速動作も可能だ。
欧州の景況は決して良くはないが「MZS05のベースとなった垂直多関節ロボット『MZシリーズ』もコストパフォーマンスの高さが評価され、欧州での導入台数は徐々に増えている」と稲熊ゼネラルマネジャーは話す。