[海外展リポート]ロボットに何をさせる? 欧州の工作機械見本市での提案【後編】/EMOハノーバー2019
ロボットで工具を管理する
ロボットを被加工物の交換以外に使う展示もあった。牧野フライス製作所は、ファナック製の協働ロボットを自社開発のAGVに搭載した「iAssist(アイアシスト)」を展示。工具室を想定したスペースで人や障害物を避けながら、切削工具を運搬して工作機械に取り付けた。 スウェーデンの情報通信大手エリクソンと共同開発した、工場内向けの次世代無線通信規格(5G)対応の通信機器を搭載。工作機械やアイアシストが生産計画に従い、同期しながら稼働するために5G技術を使った。 井上真一社長は「工作機械やロボットが同期できれば、現場の勘で補っていた生産工程の管理をデジタルシステムに置き換えて自動化できる。人は人にしかできない作業に、より集中できる」とアピールする。
切削工具の管理機器を製造するドイツのツォラーは、まるで切削工具の管理や準備をする工具室をそのまま自動化したようなロボットシステム「roboBox(ロボボックス)」を初披露した。 切削工具は、工具保持具(ツールホルダー)に装着した状態で工作機械に取り付けられる。工具をツールホルダーに装着する装置や、工具の計測機を組み合わせたものがロボボックスだ。ロボボックスに工具やツールホルダーを預けると、自動で装着して計測まで完了したものが排出されてくる。 日本法人(大阪府吹田市)の龍口一社長は「工具管理は人手に頼る部分が大きく、工場自動化のボトルネックになっている。この問題をロボボックスで解消したい」と意気込む。
ロボットで工具を交換する
ロボットを切削工具の交換装置として使う提案もあった。チェコの工作機械メーカー、ストロジムポートは大型の工作機械に工具交換のロボットシステムを組み合わせた。担当者は「切削工具の自動交換装置が付いていない古い工作機械にこのシステムを組み合わせると、工具交換を自動化でき、長時間の無人稼働ができる」と話す。 ドイツの工作機械メーカー、エルファは工作機械の切削工具を一度に4つずつ交換するロボットシステムを展示した。切削工具が取り付けられた主軸が4つ並ぶ特殊な機械用で、従来の工具交換装置では1つずつ交換したが、それよりも高能率な点をアピールする。
各メーカーが自動化提案に注力する背景には、欧州の深刻な人手不足がある。 日本メーカーのある出展者は「欧州の市況は良くない。ただ自動化設備には投資意欲がある」と分析する。 前向きな意欲というより、自動化投資以外では設備投資に動きにくい雰囲気がある。移民による人口増加を除けば、特に旧西側諸国での人手不足は、日本を含む他の先進国同様に深刻化している。そこで自動化設備を提案する工作機械メーカーが多いようだ。 これまでの工作機械とロボットの組み合わせでは、被加工物の交換用途が大半だった。今回展では、切削工具の準備や交換など、ロボットで切削工具を扱うことが、新たなトレンドになりつつあると感じた。 金属加工現場でロボットに何をさせるのか。まだまだ多様な可能性を感じる展示会だった。
(編集長 八角秀、編集部 西塚将喜)
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