
[気鋭のロボット研究者vol.20]センサーを使わずどこまでできる?【前編】/和歌山大学 土橋宏規講師
産業用ロボットの普及を妨げる要因として、導入や開発にかかる大きなコストが挙がる。和歌山大学の土橋宏規講師は、カメラや触覚センサーを必要としないロボットハンドの機構や把持(はじ)のプロセスを研究する。センサーを使わずにどこまでできるかを追求し、ロボットシステムの可能性を広げる。
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産業用ロボットの普及を妨げる要因として、導入や開発にかかる大きなコストが挙がる。和歌山大学の土橋宏規講師は、カメラや触覚センサーを必要としないロボットハンドの機構や把持(はじ)のプロセスを研究する。センサーを使わずにどこまでできるかを追求し、ロボットシステムの可能性を広げる。
豊橋技術科学大学の佐藤海二教授は「誰でも簡単に使い続けられるロボットの開発」をテーマに、ロボットの研究に取り組む。それに当たり、ロボットを複数台自作し、その制御には「NCTF制御」を応用する。NCTF制御とは佐藤教授が20年以上前に考案した独自の制御方法で、専門知識がなくても高性能な制御系を設計できるのが特徴だ。
佐藤海二教授は長年にわたり精密メカトロニクスの分野を専門に研究してきたが、2014年ごろからロボットの研究にも本腰を入れた。目指すのは、使いやすさと保守性を両立したロボットの開発。現在は振動やロボットの機構的な問題などを、自作ロボットの関節部分に搭載した内部センサーでどこまで検出し補正できるのかを調査している。
大隅久教授は産業用ロボットの自由度を高める研究を数多く手掛ける。後編では、ワイヤで懸垂した物の揺れを抑える研究を紹介する。これは、ワイヤで懸垂した産業用ロボットの制御に必要な技術。長年苦労したが、打開策を昨年見つけた。
大隅久教授の研究対象は幅広い。複数の産業用ロボットの協調作業やパラレルリンク機構を使った懸垂型ロボットの姿勢制御から、建設機械で土砂をすくう研究、クレーン作業でつり下げた物の安定性まで扱ってきた。一見すると関連性がないが、根底には共通したテーマがある。
大阪工業大学の野田哲男教授は、基礎技術からプログラミング、ロボットハンドまで産業用ロボットについて幅広く研究する。前編では電気や空圧といった動力を使わないロボットハンドを紹介したが、後編では自ら行動設計するロボットの構想について聞いた。ロボットに関する技術にとどまらず、ロボット産業の発展に寄与する取り組みもある。
ロボットハンド、ロボットシステムの設計手法、安全対策――。これらは全て、大阪工業大学の野田哲男教授の研究領域だ。研究領域の広さは「産業用ロボット研究室」というストレートな名前にも表れている。前編では、ロボットの技術的な課題の一つと言われるロボットハンドの研究を紹介する。ロボットの普及には重要なテーマだ。
大岡教授は人とロボットの触覚について研究する。前編では光の反射を応用したロボット用の3軸触覚センサーを紹介したが、今回は人の触覚に焦点を当てる。最近は人工知能(AI)の一種であるディープラーニング(深層学習)を活用し、爪の色の状態と、指先にかかった3軸方向の力の大きさの関係性を探る研究に取り組む。
大岡教授の研究テーマは「触覚」。①センシング②人の知覚を定量化して測定する学問の心理物理学③仮想現実――の3つの分野を組み合わせながら、人とロボットの触覚の研究に取り組む。ロボット関連では、光の反射を応用した3軸触覚センサーを開発した。「電気的なノイズに強いのが特徴」と話す。
作業現場では無人搬送車(AGV)、街中では掃除や案内役のサービスロボットの普及が広がり、自律移動型ロボットと人間の間隔は以前よりも格段に近くなった。危険になると動作を停止するロボットも多いが、止まると移動や作業の効率は落ちる。そこで琴坂信哉准教授はロボットを止めずに、安全と効率を両立する制御方法を考える。