
[気鋭のロボット研究者vol.31]1枚の画像だけで認識【後編】/岐阜大学 佐藤惇哉 助教
「進化計算」と呼ばれる手法と画像処理をミックスさせた研究に取り組む岐阜大学の佐藤惇哉助教。「気鋭のロボット研究者」の後編では、進化計算を生かしたボルトのばら積みピッキングの研究事例を取り上げる。人工知能(AI)と違って大量の学習データを用意する必要がなく、たった1枚のテンプレート画像だけでボルトの把持位置を認識できるという――。
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「進化計算」と呼ばれる手法と画像処理をミックスさせた研究に取り組む岐阜大学の佐藤惇哉助教。「気鋭のロボット研究者」の後編では、進化計算を生かしたボルトのばら積みピッキングの研究事例を取り上げる。人工知能(AI)と違って大量の学習データを用意する必要がなく、たった1枚のテンプレート画像だけでボルトの把持位置を認識できるという――。
製造業や物流業、農業、医療などさまざまな産業で注目を集める画像処理技術。岐阜大学の佐藤惇哉助教は画像処理技術を専門とし、産業界での実用化を見据えた研究に力を注ぐ。「進化計算」を呼ばれる手法を画像処理に適用することで、画像処理に欠かせないパラメーター調整の作業を自動化できるという。
産業技術総合研究所(産総研)の栗田恒雄研究グループ長は、産業用ロボットなどの位置姿勢を高精度に検出する技術を開発した。四角形の凹形状を「3DSマーカー」とし、ウェブカメラなどで内部の光と影の境界線を読み取り、その結果からカメラとマーカーの相対位置を検出する。栗田研究グループ長が安定した検出対象として、光と影に目を付けた理由とは。
産業技術総合研究所(産総研)の栗田恒雄グループ長は、産業用ロボットなどの位置姿勢を高精度に検出する技術を開発した。10mm四方で深さ8mmの四角形の凹形状を「3DSマーカー」とし、4つの光源とウェブカメラを組み合わせた検出装置で内部の影を読み取る。その結果からカメラとマーカーの相対位置を検出する。工作機械やロボットなど、座標制御の生産財に幅広く応用できる。
村松久圭助教はロボットの動作制御の研究に加えて、3年前に移動型四腕ロボットの研究開発を始めた。村松助教は「これまでの研究とは毛色が違うため、新鮮な気持ちで研究に取り組める」と話す。従来のロボットの構造にとらわれない独特な形状をしており、1台でさまざまな行動ができるのが大きな特徴だ。
村松久圭助教はロボットの運動制御や独自の移動型四腕ロボットの研究開発に取り組む。前編で紹介するのは、学生時代から研究を続けるロボットの運動制御。従来のロボットは予期せぬアクシデントに対して臨機応変に対処することは難しいが、突発的な接触を柔軟に受け流す制御アルゴリズム(情報処理方法)を確立した。
中京大学の木野仁教授は、パラレルリンクロボットのアームを軽量で柔軟なワイヤに置き換えた「パラレルワイヤ駆動ロボット」の研究を学生時代から続けている。この研究が「源流」となり、現在の受動歩行ロボットや筋骨格型ロボット、レスキューロボット、免震システムなどに研究テーマが広がった。後編では、これらの応用研究について紹介する。
中京大学の木野仁教授の研究テーマは受動歩行ロボットや筋骨格型ロボット、レスキューロボット、免震システムなど多岐にわたる。前編では、全般的な研究の「源流」となるパラレルワイヤ駆動ロボットについて紹介する。パラレルリンクロボットで使われるアームをワイヤに置き換えることで大幅な軽量化を実現でき、さらなる高出力化や高速化が図れるのが特徴だ。
大阪大学の小山佳祐助教が開発した近接覚センサーをロボットハンドに組み込むと、カメラを使わず手探りで対象物(ワーク)をつかむピッキングシステムを作ることができる。従来のピッキングシステムに比べ安価でコンパクトな構成になり、ロボティクスの最後のとりでといわれるロボットマニピュレーションの難しさを打破する一手にもなる。
名古屋工業大学の田中由浩教授は、「アバターロボット」と呼ばれる遠隔操作ロボットを複数人で動かして協調作業をする研究に力を入れている。複数人が意思疎通を図りながら円滑に作業を進める上で、自身の専門分野である触覚のセンシング技術を活用する。「1人ではできない作業も、複数人の能力を融合すれば可能になる」と言う。今後も研究を進め、将来は技能伝承や多様性のある社会の実現に貢献したい考えだ。研究室内にはデモ機も設置されており、記者も実際に体験させてもらった。