[注目製品PickUp! vol.91]一品一様で仕立てるロボットカバー/艶金「ロボットスーツ」
ロボットダイジェスト編集部が注目したロボット関連の製品を紹介する「注目製品PickUp!」。第91回は、衣料向け生地の染色を主力とする艶金(岐阜県大垣市、墨勇志社長)のロボットカバー「ロボットスーツ」を取り上げる。ロボットの用途に応じて3種類のカバーを用意し、過酷な環境下で稼働するロボットをさまざまな汚れや熱から保護する。同社は完全オーダーメードでカバーを作っており、Y-TEC事業部の松本修課長は「一品一様で仕立てるため、同じカバーは一つとしてない」と語る。
用途に応じて3種類
艶金は1956年の創業以来、衣料向けの生地に染色や機能加工を施す染色整理加工を主軸に事業を発展させてきた。2007年からは自動車業界向けを中心に、ロボット用カバー「ロボットスーツ」も販売している。①塗装時に塗装ミストからロボットを保護し塗装対象物へのグリスの付着を防ぐ「塗装用」②切削加工や研削加工の際に切りくずやクーラント(冷却用の切削油)の侵入を防ぐ「クーラント用」③離型剤やヒューム(金属蒸気)からロボットを保護する高温環境用の「耐熱用」――の3種類のラインアップを用意する。
それぞれのカバーに使われる生地には機能加工を施しており、塗装用には炎が燃え広がりにくい難燃・帯電防止加工、クーラント用には水や油をはじくはっ水・はつ油加工を施す。また、塗装用とクーラント用にはロボットの複雑な動きに追従できる伸縮性に富んだニット生地、耐熱用には最大200度の高温に耐えられるアラミド繊維製の生地を採用する。過酷な環境下で稼働するロボットをさまざまな汚れや熱から守り、ロボットの長寿命化やトラブル軽減による生産性向上を実現する。
松本課長は「染色整理加工事業で培った染色技術と機能加工のノウハウを存分に生かした。繊維業界に130年以上携わってきたからこそ、用途に適した多彩な生地を調達できるのも強み」と胸を張る。
完全オーダーメードで
ロボットスーツの主な対象は垂直多関節ロボットで、ファナックや安川電機などあらゆるロボットメーカーや機種に対応する。人と同じ空間で作業する協働ロボットにもカバーを装着できるが、松本課長は「人が作業する現場は過酷な環境が少ないからか、協働ロボット向けの依頼は少ない」と語る。これまでに全国180以上の工場に納品実績があり、年間の納入枚数は約9万枚に上る。驚くべきは、これらのカバー全てが完全オーダーメードで作られた点にあり、その製作と営業をY-TEC事業部の13人の従業員が一手に担っている。
製作では、松本課長ら3人の営業担当者が工場を訪れ、ロボットアームの長さや太さを採寸する。その採寸データを基に営業担当者が図面を作成し、10人の縫製担当者が機能加工の施された生地を手作業で裁断、縫製する。カバーを装着したロボットが動作する時に周辺設備に干渉しないよう注意したり、カバーがロボットの関節部に巻き込まれないようにカバー径を太くしてロボットアームとの接触面積を減らしたり、設計にもさまざまな工夫を凝らす。着脱もマジックテープ式やファスナー式といった現場作業者が扱いやすい方法を提案する。さらに、要望があればロボット本体に加え、動力ケーブルやエアホース、架台などの周辺機器専用のカバーも製作する。ロボットスーツは使い捨てで定期交換が必要だが、汚れやすい部分のみを分割して交換できる構造とし、コスト面にも配慮した。
松本課長は「顧客指定のコーポレートカラーへの変更や、ケーブルを通すための開口部の設置も含め、顧客の要望に沿って一品一様で仕立てるため、同じカバーは一つとしてない。カバーが完成したら実際にロボットに装着し、何度もトライ&エラーを繰り返す」と語る。
売り上げは右肩上がり
艶金がロボットスーツを発売したきっかけは、長年取引関係にあった化学系商社の槌屋(名古屋市中区、大原鉱一社長)から寄せられた相談だった。槌屋の取引先の自動車部品メーカーの工場では、「塗装ミストがロボットに付着し、動かなくなる」との課題を抱えていたという。
「伸縮性に富むニット生地なら、ロボットの動きを妨げずに塗装ミストを防げると考えた」と松本課長は当時を振り返る。
その後、艶金は2007年にY-TEC事業部を立ち上げ、ロボットスーツの生地の調達から機能加工、縫製、納品に至るまでの一貫生産体制を構築。現在、販売窓口を担うのは槌屋だが、艶金の営業担当者も一緒に顧客を訪問するなど、協業体制を敷いている。
ロボットスーツはリピート受注が多い。だが、最近は自動車部品メーカーなどでのロボット導入の拡大を追い風に、新規顧客の開拓も進んでいるという。24年のロボットスーツの売り上げは約1億5000万円に達した。松本課長は「売り上げは右肩上がりで伸びている。今後5年以内に売り上げを5億円に拡大するため、展示会に出展して新規分野の開拓を加速させる他、槌屋との協業体制も強化して提案活動を活発化させたい」と意気込む。
また、発売当初は売り上げの9割が塗装用だったが、近年はクーラント用や耐熱用のニーズも増加している。松本課長は「熱間鍛造の現場では400度以上の高温に耐えられるカバーが欲しいとの声もあり、製品開発を進めている。将来はヒト型ロボット(ヒューマノイド)向けのカバーにも挑戦したい」と展望を語る。