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2023.11.30

連載

[気鋭のロボット研究者vol.31]1枚の画像だけで認識【後編】/岐阜大学 佐藤惇哉 助教

「進化計算」と呼ばれる手法と画像処理をミックスさせた研究に取り組む岐阜大学の佐藤惇哉助教。「気鋭のロボット研究者」の後編では、進化計算を生かしたボルトのばら積みピッキングの研究事例を取り上げる。人工知能(AI)と違って大量の学習データを用意する必要がなく、たった1枚のテンプレート画像だけでボルトの把持位置を認識できるという――。

実用化を念頭に

ばら積みピッキングの実験の様子(提供)

 佐藤助教は学生時代から画像処理技術の研究に努める。「産業界での実用化を念頭に置いており、企業との共同研究に取り組む機会も多い」と話す。

 画像処理をする時は通常、対象物に合わせて複数のパラメーターを人が手作業で調整する必要があり、手間がかかっていた。
 そのため、佐藤助教は進化計算と呼ばれるパラメーター最適化のためのアルゴリズム(問題解決の手順)を画像処理の研究に取り入れ、パラメーター調整の作業を自動化しようと模索している。

撮影環境が変化しにくい場所に

「産業界での実用化を念頭に置いて研究する」と話す佐藤惇哉助教

 ロボット関連の研究事例もあり、色と深度を読み取る「RGB-Dカメラ」を使ったボルトのばら積みピッキングなどにも挑戦してきた。
 「AIだと学習データを何百枚も集める必要があるが、進化計算を生かせばたった1枚のテンプレート画像だけで画像処理に必要なパラメーターを自動出力できる」と佐藤助教は強調する。
 RGB-Dカメラで撮影したボルトの画像と1枚のテンプレート画像を照合し、ロボットが最も把持しやすい位置にあるボルトを認識してピッキングする。実験でのピッキング成功率は約90%で、準備が簡単な割には高い認識精度を出せたという。

 「進化計算は画像のばらつきの影響を受けるため、AIのように汎用的に使えるわけではない。工場の検査室など、撮影環境が変化しにくい場所で特に力を発揮する」と佐藤助教は語る。

――終わり
(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)

佐藤惇哉(さとう・じゅんや)
2012年3月岩手大学工学部情報システム工学科卒業、14年3月同大学院 工学研究科デザイン・メディア工学専攻修士課程修了、17年3月同博士課程修了(学部名や学科名は当時)。同年2月から岐阜大学工学部機械工学科知能機械コース助教、現在に至る。2児の父で、勤務後や休日は育児に奮闘する。岩手県出身。1989年5月生まれの34歳。

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