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2023.10.31

連載

[気鋭のロボット研究者vol.31]「進化計算」を画像処理に【前編】/岐阜大学 佐藤惇哉 助教

製造業や物流業、農業、医療などさまざまな産業で注目を集める画像処理技術。岐阜大学の佐藤惇哉助教は画像処理技術を専門とし、産業界での実用化を見据えた研究に力を注ぐ。「進化計算」を呼ばれる手法を画像処理に適用することで、画像処理に欠かせないパラメーター調整の作業を自動化できるという。

パラメーター調整の作業を自動化

研究開発した画像処理技術を適用したロボットシステム(提供)

 佐藤助教の主な研究テーマは、画像計測などをはじめとした画像処理技術だ。一般的に画像処理の分野では深層学習などの人工知能(AI)技術を使った研究が主流だが、佐藤助教は進化計算の手法を利用した画像処理を専門とする。「画像処理と進化計算をミックスした研究は珍しい」と話す。

 画像処理をするには通常、対象物に合わせて複数のパラメーターを事前に設定する必要がある。従来は人が各パラメーターを手作業で試行錯誤しながら調整しなければならず、対象物にとって最適なパラメーターを決定するのに多くの時間がかかっていた。例えば、カラー画像を2値化(ある一定のしきい値を設け、その値以上の画素値を白色、その値未満を黒色に変換する処理)する作業一つ取っても、対象物によって最適なしきい値が異なり、手動でしきい値を見つけるのは手間がかかる。

生物の進化の過程を模倣

「画像処理と進化計算をミックスした研究は珍しい」と佐藤惇哉助教

 これに対し、進化計算の手法を画像処理に取り入れれば、こうしたパラメーター調整の作業を自動化できるという。進化計算とは、1000回なら1000回とあらかじめ決められた探索回数の中で、目的を満たすための最適なパラメーターの値を自動出力する手法を指す。探索点の動きが生物の進化の過程を模倣していることから、進化計算との名が付いた。
 佐藤助教は「最適解が確実に得られる保証はないが、最適解やそれに近い解を少ない計算時間で取得できるのがメリット」と説明する。

 現在は部品の外観検査やばら積みピッキングなど、産業界での実用化を見据え、進化計算の手法を取り入れた画像処理技術の研究に力を注ぐ。
 後編ではその研究事例の一端を紹介する。

――つづく
(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)



佐藤惇哉(さとう・じゅんや)
2012年3月岩手大学工学部情報システム工学科卒業、14年3月同大学院 工学研究科デザイン・メディア工学専攻修士課程修了、17年3月同博士課程修了(学部名や学科名は当時)。同年2月から岐阜大学工学部機械工学科知能機械コース助教、現在に至る。2児の父で、勤務後や休日は育児に奮闘する。岩手県出身。1989年5月生まれの34歳。

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