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2022.02.22

インタビュー

[特集 国際ロボット展vol.3] ロボット事業を4倍規模に/川崎重工業 高木登 執行役員ロボットディビジョン長

「ベースは産業用ロボットで培った技術。それを応用して対象となる事業領域を広げる」と川崎重工業のロボットディビジョン長の高木登執行役員は言う。キーワードは「安全安心リモート社会」「近未来モビリティー」の2つだ。2022国際ロボット展(iREX)では自動化の遅れる物流市場にも焦点を当て実用的なソリューションを提案する。

「安全安心リモート社会」や「近未来モビリティー」を提案

――自動車、半導体産業、一般産業機械をロボットの主要市場とされています。
 自動車業界では新工場建設のような大型投資は減っていますが、逆に老朽化した設備の更新は増えています。小規模案件が多くなってますが、売り上げは落ちていません。また、特に塗装分野ではカーボンニュートラル(炭素中立、CN)の注目度が高まっています。「どこまでCNに近づけるか」との視点でのロボット化です。半導体産業はご存知の活況で、製造装置産業向けの事業も右肩上がりです。しかし、部品不足が悩ましいところです。一般産業機械も全体にいい状態です。

川崎重工業の高木登執行役員ロボットディビジョン長

――新型コロナウイルス禍の影響はあまりない?
 ロボット事業の半分以上が海外向けです。特に中国が大きく、顧客層はほぼローカル企業ですが、コロナ禍でエンジニアを送り込めないのでシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)のトレーニングができていません。加えて、営業部隊も現地・現場に行けず、新規のSIer開拓や顧客開拓ができないのが悩みです。

――昨年発表された「ビジョン2030」では2030年までに精密機械・ロボットカンパニーの売上高を倍増させるとのことです。
 ロボット事業単体で言うと現在の約1000億円のレベルから4000億円まで伸ばすのが目標で、最も伸びが期待できるのは医療分野です。手術支援用のロボットシステム「hinotori(ヒノトリ)」は今後続々と高機能版を市場投入する計画です。自動PCR検査装置は世界最高峰の検査精度と診断速度を誇ります。これら医療分野を含めた「安全安心リモート社会」、そして「近未来モビリティー(人・モノの移動を変革)」という2つのキーワードに関連する市場が伸びるとみています。

――詳しくお願いします。
 医療分野以外の安全安心リモート社会向けは、例えば昨年ソニーグループと立ち上げた「リモートロボティクス(株)」のサービスがあります。両社からロボット技術、遠隔操作、センシング、画像処理などを持ち寄りロボットの遠隔操作用サービスプラットフォームを提供します。近未来モビリティー関連では、最近は自律型移動ロボット(AMR)が注目を集めていますが、工場内だけでなく工場の外も自由に走れるようなものを普及させたいと考えています。両分野ではすでに多くのサービスロボットがありますが、それらに真正面から対抗しようとは思いません。わが社のベースの技術はあくまで産業用ロボットです。アーム型ロボットや産業用の人工知能(AI)で培った技術を基に事業領域を広げます。

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