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2020.12.21

[活躍するロボジョvol.3]ロボットは人よりも扱いが難しい/山田製作所 永野亜矢子さん

ロボット業界で活躍する女性にスポットを当てた連載「活躍するロボジョ」。3回目は、金属部品の研削加工を手掛ける山田製作所(愛知県あま市、山田英登社長)で、ロボットの操作を担当する永野亜矢子さんを紹介する。部品の両端に開く小さな穴と、研削盤内で部品を支える専用工具の位置を合わせるためにロボットの動きを調整する。「非常に細かい作業。ロボットは人よりも扱いが難しい」と話すが、良い製品を生産するために妥協はしない。

小さな穴と工具の位置を合わせる

 有線放送からはやりの音楽が流れる山田製作所の工場内には、20代~30代の若い女性社員が円筒研削盤(円筒形状の部品の外周面を研削加工する工作機械)を操作する姿が目立つ。

 その一人である永野さんは、垂直多関節ロボットと円筒研削盤を組み合わせたロボットシステムの段取り(生産前の準備)作業や、ロボットの細やかな位置調整を担当する。

 永野さんが担当するロボットシステムは、ばらばらに積まれた部品を画像センサーで認識し、ロボットが部品をつかんで、円筒研削盤に供給する。加工後は、ロボットが機械から部品を取り出し、専用のストッカーに排出するというものだ。

「ロボットを正確に調整して良いものを作りたい」と語る永野さん

 高精度な加工をするには、部品の両端に開く小さな穴に、機械内にある部品を支える「センター」と呼ばれる専用工具をうまく差し込まなければならない。

 ロボットが担う一連の動作のプログラムはあらかじめ作成されているが、こうした微調整には人手が必要だ。さらに扱う部品は、加熱や冷却を経た寸法にばらつきのある焼き入れ後の品である。このため、事前に作成したプログラムのままでは穴とセンターの位置がかみ合わず、高精度な加工ができないという。

永野さんが担当するロボットシステム

 そこで永野さんの腕の見せ所だ。
 部品の形状を見ながら、穴とセンターの位置がぴったりと合うよう、「ティーチングペンダント」と呼ばれる専用機器でロボットを操作。ロボットが部品を持ち運びする位置や角度を現場で微調整する。

 「わずか1~2mmの小さな穴とセンターの位置を合わせるのが難しく、非常に細かい作業。部品の左右の向きや奥行き、傾きをしっかり合わせなければ良品を生産できない」と語る。

被加工材と、それを支えるセンター

 永野さんの調整次第で、不良品の比率が変わる。夜間に無人でロボットシステムを稼働させるため、いつも夕方にセッティングする。翌朝に確認すると良品が数個しかないこともあった。
 
 「時間をかけてでも、納得がいくまで調整作業を繰り返して良いものを作りたい」と熱いまなざしで話す。
 
 永野さんは妥協をしない。生産する製品は、許容される寸法誤差の範囲に入るだけでは満足しない。誤差がゼロの高品質な製品を作ることを常に目指している。

2児の母、日々が勉強

山田製作所では働きやすい環境が整備されており、女性が活躍している

 重要な仕事を任される永野さんだが、同社に入るまでロボットを操作した経験はなかった。
 「最初は『ロボットって何?』という感じだった」と振り返る。
 飲食店の勤務経験が長く、これまでに多くの人と接してきた。「ロボットは人よりも扱いが難しいかも」と笑う。

 過去には飲食店での接客だけでなく、パチンコ台を作る工場で、パチンコ台の盤面に打ち込まれるくぎを微調整する仕事なども経験した。「前の仕事も今のロボットの微調整もですが、細かい作業が好きなんだと思います」と自身を分析する。

女性が活躍する山田製作所(提供)

 中学1年生の息子と小学1年生の娘を持つ働く母だ。「家事や育児も学ぶことが多いけど、ロボットの微調整も奥が深く、日々が勉強です。色んな仕事を経験してきたけど、今が一番楽しいですね」と笑顔で語る。

(ロボットダイジェスト編集部 鷲見咲美)

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