[気鋭のロボット研究者vol.4]AIで物の形から使い方を推定【後編】/中京大学橋本学教授
一般家庭で求められる視覚システムも
特定物体認識と一般物体認識
生産ラインと一般家庭では、ロボットの“目”に求められる技術にどのような違いがあるのか。
あらかじめ決められた物体が流れる生産ラインでは、「どんな物が流れてきたか」の認識は不要で、「物体の位置や姿勢」だけをロボットが把握できればいい。つまり、ロボットの視覚システムに求められるのは、物体がどこにどう置いてあるかを正確に認識すること。「われわれの業界用語で、これを『特定物体認識』と呼ぶ」と橋本教授は話す。
一方、一般家庭は生産ラインとは違い、どんな物がどこに置かれているかが全く分からない。そのため、ロボットにはまず「これはコップ」「これはスプーン」などと、目の前に置かれた物体の名前を正しく認識することが要求される。前述の特定物体認識に対し、これは「一般物体認識」と言う。
名前だけではなく使い方も
だが、物体の名前が分かるだけでは意味がない。
「コップで液体を蓄える」「スプーンですくう」など、その物体が持つ機能も含めて認識できなければ、ロボットは次の動作に移れない。
橋本教授は「人であればスプーンを見ただけで、どの部分を持ち、どうすくうかを知っている。しかし、ロボットだと目の前の物体の名前が『スプーン』と分かっても、そこから先に進めないのが現状」と語る。
そこで橋本教授は2015年、物体の機能をロボットに認識させる研究に着手した。コップやスプーンなどの道具の形状を基に、その形状から考えられる機能、つまり道具の使い方を人工知能(AI)で推定する機能認識のシステムを新たに開発した。