大手ロボットメーカー幹部が未来を語る【前編】/RTJ2022「スペシャルセッション」
鍵を握るのはAI
神谷孝二氏 ロボットへのニーズは高いものの、実際に導入しようとすると課題がたくさんあるというのが現状です。変種変量生産、勘やコツのいる作業、柔軟物のある作業など、自動化が進まない領域があります。そこでは、ロボットのティーチングやプログラミングのコストが高くなるため、自動化しても割高になってしまう訳です。 これに対するアプローチは二つあります。一つ目は、ロボットの作業を単純化し、人とロボットで役割を分担すること。そのためには、協働ロボットの安全性や使いやすさをさらに高めることが重要です。 二つ目は、そもそも複雑な作業にも容易に対応できるよう、ロボットを進化させること。鍵を握るのはAIです。わが社が取り組んでいるのは、行動を生成する「マルチモーダルAI」の開発です。これを実現できれば、言語化できない勘やコツの要る作業をプログラミングレスでロボットにさせられると考えています。すでに液体や粉体の計量などで実績がありますから、これをさらに進化させつつ使いやすさも追求します。 また、遠隔地にあるロボットのサポートや、災害時の救助ロボットへのニーズが高まっていますが、遠隔操作には第5世代移動通信(5G)を超えるインフラが必要になるのではないでしょうか。
中島秀一郎氏 ロボット技術の進化に関して特に注目しているのは、ロボット技術と移動技術の融合です。従来のコンベヤーに加え無人搬送車(AGV)や自律搬送車(AMR)も進歩しています。融合するために重要なのは、シミュレーション技術の統合です。各機器が独自にシミュレーションをすると、機器ごとに座標の考え方などが異なってしまいます。 また、ロボットが移動する以上は、状況が変化する中で安全を確保することも必要です。 今後ロボット関連で立ち上がるであろう技術の中で興味があるのは、「群制御(複数のロボット・機器を集団として最適制御する技術)」と呼ばれる技術です。わが社はいろいろな研究活動をしていますが、スタートアップ企業との協業が大事になると思います。
――後編へ続く (ロボットダイジェスト編集部 松川裕希)
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