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2022.09.07

連載

[新連載 進化する物流vol.1]物流の変革期に、過去最大の規模で/国際物流総合展 北條英 事務局長

物流自動化の最前線を紹介する新連載「進化する物流」。第一回は「国際物流総合展2022」の事務局長を務める日本ロジスティクスシステム協会(JILS)の北條英JILS総合研究所長に、物流業界の現状や今回展の見どころを聞いた。9月13日~16日の4日間、東京都江東区の東京ビッグサイトで開かれる同展は、物流関係ではアジア最大級の専門展だ。

物流に注目が集まる

――近年、物流に大きな注目が集まっています。
 新型コロナウイルス禍以降、一部で物流の滞りが生じ、物流の重要性が再認識されました。「ロジスティクス」や「サプライチェーン」といったコトバが一般の方の目に触れる機会も増えたように思います。物流に対する意識が高まり、人手不足の現状も徐々に知られるようになりました。物流システム機器など物流設備への投資も活発です。

――このタイミングで、国際物流総合展が開催されます。
 2021年には愛知県で国際物流総合展が開かれ、派生イベントの「INNOVATION EXPO(イノベーションエキスポ)」は20年、21年にもありましたが、東京で国際物流総合展を開くのは4年ぶりです。前回東京で開催した18年は、479社・2435小間の規模で開催し、約7万5000人が来場しました。今回はそれを上回り、過去最大規模の526社・2597ブース(8月30日時点)で開催する予定です。来場者も8万人を見込んでいます。

2018年の国際物流総合展も多くの来場者でにぎわった

――出展者が大幅に増えています。物流に関する自動化システムやロボットシステムの展示も増えていますか?
 ロボットを含めた自動化機器、自動化システムの展示は近年増える傾向にあり、国内メーカーに加え、中国などのロボットベンチャー企業も出展します。国際物流総合展には、物流センターを開発してテナント企業に貸し出す物流不動産会社や、サード・パーティー・ロジスティクス(3PL)と呼ばれる物流サービス企業など、幅広い出展者が集います。近年は、物流不動産会社と自動化システムの企業がコラボレーションし、共同出展するケースも増えています。物流不動産会社から見れば、ロボットや自動化システムの企業と組むことが、自社の物流施設の付加価値になります。

ロボットが課題を解決

――物流業界の中で、ロボットの重要性が高まっている?
 間違いなく高まっています。例えば大手通信販売サイトのAMAZON(アマゾン)は、多数のロボットで自動化した物流センターを次々に整備しています。他にも、資本力のある企業が物流の自動化に積極的に投資しています。

――物流業界では自動化が進んでいるのですね。
 それは大手だけで、大半の物流現場はまだまだ労働集約型で人手に頼っています。一口に物流と言っても、単純に物を動かすだけではありません。物流の6つの機能の一つに、ラベル張りや詰め替えなどをする「流通加工」がありますが、製造業の部品加工など自動化が進んだ他業界の人が見れば、あまりにも人手頼みで驚くかもしれません。しかし人手に頼っていた企業でも、人手が確保しにくい時代ですから、近年は自動化への関心が高まっています。


――物流の人手不足と言えば、トラックドライバーの不足もよく耳にします。
 倉庫作業よりもさらに、トラックドライバーの人手不足は深刻です。物流業界では「2024年問題」が目前に迫っています。ドライバーは長時間労働が常態化しがちでしたが、24年から時間外労働の上限規制が始まります。ドライバーの労働環境改善のためには必要な施策ですが、実施直後にはドライバーの確保が一層困難になるなどの混乱が予想されます。

――自動運転技術の研究や配送ロボットの開発は進んでいますが、トラックドライバーの業務をすぐに自動化するのは難しそうです。
 実は、倉庫や物流センターへのロボットの導入も、トラックドライバーの問題解決の一助となることがあります。トラックドライバーの業務はトラックを運転することですが、付帯的に荷物の積み降ろしも担っているケースが少なくありません。この場合、倉庫や物流センターへのロボットの導入が、ドライバーの一部業務の自動化になる可能性があります。

2018年の国際物流総合展でもロボットは大きな注目を集めた(写真はオークラ輸送機のブース)

――具体的には?
 ドライバーの作業で特に負担が大きいのが、荷物を一つ一つトラックに積んだり降ろしたりする手積み、手降ろしです。これを、パレット(荷役台)ごとの積み降ろしにすれば、負荷を大幅に軽減できます。産業用ロボットを使ったパレタイズシステムで、パレットに荷物を積み付け、パレットごとトラックに積んで運送する。パレットからの荷降ろしもロボットを使ったデパレタイズシステムが担う。ドライバーの肉体的な負荷が減ればそこに起因する離職も減り、体力に関わらずドライバーとして働きやすくなります。他にもさまざまな自動化・省人化機器を活用して入出荷作業を効率化すれば、ドライバーの長時間勤務の要因となる荷役時間を短縮できるでしょう。

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