• インタビュー
2019.05.20
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ロボットを入れたい企業は必見! ガイドラインと専門教育で導入サポート/名古屋工業大学江龍修副学長

少数に専門性の高い講座

――次はなごやロボット・IoTセンターの取り組みについてうかがいます。先ほどおっしゃった「相談窓口の機能」とは何でしょうか。  当センターでは、ロボットやIoT技術の導入を検討する企業からの問い合わせや相談に対応しています。必要に応じて、SIerなどを紹介することもあります。さらに、センター内にショールームを設け、さまざまなメーカーのロボットや周辺機器を展示しています。製品は2カ月程度で入れ替えています。 ――ではもう一つの「学びの場」とは。  名古屋市と当大学が連携し、ロボットやIoT、サイバーセキュリティーに関する高い専門性と問題解決力を兼ね備えた人材を育成する「ロボット・IoT・サイバーセキュリティ専門人材育成講座」を半期に一度開講しています。企業の生産性を高める要素として、ロボットとIoTは密接に関わります。IoTではインターネットを使うため、必然的にセキュリティー対策も求められます。だからこそ、ロボットとIoT、セキュリティーの講座をそろえました。

19年6月から7月にかけ専門人材育成講座が開講される

――専門人材育成講座の概要は。 講座は「ロボットシステムインテグレータ講座」「モノのインターネット(IoT)システムインテグレータ講座」「サイバーセキュリティ対策人材講座」の3つです。SIerの社員や、IoTやサイバーセキュリティーの専門知識を持つ大学教授などが講師を務めます。各講座は全部で8回あり、定員は原則的に1社あたり1人で20人までとしています。受講費用は無料です。直近では19年6月から7月にかけ、専門人材育成講座を開講します。 ――受講費が無料なのは驚きです。どのような方が受講しに来ますか。  受講費が有料の場合、中小企業などは参加するのに二の足を踏みます。ハードルを下げることが大事ですね。講座を受けられる人は地元の中小企業の経営者や大企業の生産技術の担当者などさまざまです。専門人材育成講座は名古屋市が主催ですから、まずは地元の中小企業、中堅企業、次に地元の大企業、そして他県の中小企業という順番で、募集対象を広げています。非常に人気があり、お断りするケースもあります。 ――定員は20人とのことでしたが、今後拡大するお考えは。  ありません。講座では実際の製品を使った指導などもあるため、20人が限界です。これ以上増やすと、講座の質が落ちる懸念があります。専門人材育成講座は、大人数を相手にする講座とは違います。受講できるのは少数ですが、専門性の高い内容を提供します。

技術の進歩に合わせ内容を見直す

ロボットの導入はトレーサビリティー対応にもつながる

――専門人材育成講座を始めて、参加者からはどのような反響がありましたか。  講座を受けた企業が実際にロボット導入に向けてSIerとやり取りを進めているケースは何件もあると聞いています。事前にガイドラインに基づいて自社の製造現場の棚卸しをしてもらうので、基本的に講座を受けに来られる企業は本当にロボットを導入したいと考えています。導入しないとの決断を下したところも中にはありますが、ロボットの導入に実際に踏み切った企業もあります。 ――講座は今後も続けていきますか。  3カ年で講座を実施しており、今年度で3年目を迎えました。3年で1期ですが、もし次の期も講座を開催できるなら、そこからもう3期ぐらい続けられればと思っています。ただ、技術の進歩に合わせて講座の内容も見直す必要があります。例えば、第5世代移動通信システム(5G)の導入がこれから本格化すれば、通信速度を飛躍的に高めることができます。ロボットに搭載されるモーターも今後、もっと小型化し軽量化するでしょう。これらの技術が進歩すれば、ロボットのスピードをもう一段階上げることができます。すると、これまでとは違った使い方も可能になるわけです。その時にロボットはどうあるべきでしょうか。こうした未来を見据え、講座の内容も常に変化させていく必要があります。例えば、5Gを研究テーマにしている教授を招き、5Gの講座を組み込むこともあるかもしれません。また、当センターではSIerからの専門的な技術相談にも対応しています。ですから、直近ではSIerを対象とした中級者向け講座を新設しようかとも検討しています。今年度中にその講座を開催するのが理想です。 ――講座の内容も時代の流れに応じて変化させていくのですね。ありがとうございました。  人が作業をすると品質がばらばらになることがありますが、ロボットを導入すれば品質の安定化につながります。また現在は、トレーサビリティー(履歴を追跡可能な状態にすること)が企業規模を問わず非常に重要になっています。ロボットとトレーサビリティーは親和性が高く、トレーサビリティー機能を持たせたロボットシステムなどもあります。その意味では、ロボットの活用は中小企業がトレーサビリティーに対応するための第一歩とも言えるでしょう。だからこそ中小企業に向けて、ロボットの導入に関する教育が必要になるのです。

――終わり (聞き手・ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)

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