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2024.09.27

イベント

ロボとAIの自律判断も! 日立が「未来の工場」見せる

ロボット提案も多数

3Dビジョンシステムを搭載した移動式のデパレタイジングロボット

 産業用ロボットを使った実演もあった。物流現場向けの提案では荷役台(パレット)から段ボール箱を下すデパレタイジングロボットを展示した。
 協働ロボットを台車に搭載し、移動式のパッケージ製品にした。ロボット先端にはロボットハンドとカメラを搭載した。21年に買収したKyoto Robotics(キョウトロボティクス)の3Dビジョンシステムを使い、異なるサイズの箱が積み重なったパレットにも対応する。

「イチダスレーザー」を搭載したスーツケースほどの検証キット

 また、無人搬送車(AGV)向けに壁や障害物をレーザーで検知する「レーザ測位システムICHIDAS Laser(イチダスレーザー)」を提案した。
 一度走行すれば、自動で周囲の地図を作成する。二度目以降はその地図を基に自己位置を推定しながら走行できる。
 実証では走行ルートの繰り返し精度は±10mmと、検出精度の高さが特徴だ。会場では、スーツケースほどのサイズの検証キットを走行させた。

ドアを開けるAIロボ

「AIロボット」の実験機

 AI技術の活用提案も多かった。
 その一つが、「AIロボット」だ。微妙な力加減の変化や臨機応変さが必要な作業への適用を目指して開発を進める。力加減の調整や応用時にAIを使って自律的に対応させる。

 実験機は、ビジョンシステムを搭載した双腕ロボットがベース。手元にあるロボットを操作して実際に作業するロボットを追従させるマスタースレーブ方式で動かす。ビジョンシステムで得た視覚情報と、その際に取るべき動作をAIに学習させる。
 マスタースレーブ方式にしたのは、作業中の動作に必要な把持力や各関節の角度、回転の強さ(トルク)を忠実に覚えさせるため。数十回ほど繰り返すことで、自律的に行動できるようになるという。

 実証では、ドアノブが付いたドアを開ける作業を学習させた。ドアを開くには、複数の認知と行動が必要だ。まず壁面に対して色の異なる部分をドアと認識する。その上で、ドアノブのレバーの位置を認知して、ロボットハンドで把持する。そして、レバーを下げながら、ドアを開ける。それら一連の動作をマスタースレーブ方式で繰り返した。
 学習を重ねた結果、これらをこなせるようになった。さらに、ドアやドアノブのレバーの色や形状が多少異なる場合も対応できる。ドアは押して開く場合と引いて開く場合がある。これらも学習させることで、引いてもダメなら押してみるようにもなった。

 担当者は「生産現場などには、微妙な力加減で品質の良しあしが変わる作業も少なくない。マスタースレーブ方式を使えば、熟練者の力加減なども認識できる。今後は一度簡易的なロボットで学習したモデルを一般の産業用ロボットに移転する技術も開発したい」と意気込む。

(ロボットダイジェスト編集部 西塚将喜)


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