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2022.04.05

惣菜製造に一石投じる! 唐揚げやポテサラ用ロボ本格導入へ/日本惣菜協会ほか

やっかいなポテサラの粘着性

ポテトサラダを容器に盛り付けるロボットシステムの稼働の様子

 今回のシステム構築で苦労したのは、ポテトサラダの粘着性という。一般にポテトサラダはじゃがいものでんぷんなどで、ロボットハンドなどに付着しやすい。
 そこでロボットハンドの爪部分にビニールをかぶせ、把持して容器上で離す際の動きも工夫した。ロボットハンドと爪部分は磁石で固定しており、簡単に交換できる。

 また、ロボットハンドには計量センサーも搭載した。ポテトサラダを把持する際に、事前に設定した重さでつかみ取る。展示では130gに設定し、ハンドに付着して残る分を加味して余分につかみ、設定の重さを下回らないようにする。

 盛り付ける前のポテトサラダを入れておく番重も開発した。一般の物よりも間口が狭く、深さがある。
 また、盛り付け後の容器をコンベヤーに押し出す機器の形状を工夫して、コンベヤーと同期制御も不要とした。安価で複雑な制御をできる限りなくしたセルシステムに仕上げた。

 同プロジェクトを率いる日本総菜協会の荻野武フェローは「結果的に、ポテトサラダにロボットハンドを突き刺すようにして把持する方法が合理的だった。番重にも深さがあるため、一度に大量のポテトサラダをつかみやすい。これも『ロボフレ』の一つ」と話す。

協働ロボでも生産性を確保

アールティの人型協働ロボット「Foodly(フードリー)」

 また、ロボットベンチャー企業のアールティ(東京都千代田区、中川友紀子社長)が開発した人型協働ロボット「Foodly(フードリー)」も、複数企業に導入された。

 安全柵なしで稼動できる協働ロボットで、会場ではベルトコンベヤーの前に立ち、唐揚げをトングでつかんで弁当容器に入れる作業を披露した。
 実際に生産現場では、人と同じ生産ライン上に設置し、唐揚げなどの弁当詰め作業をこなす。既に導入した各社の「ロボフレ(ロボットが稼働しやすい環境づくり)」活動の成果もあり、人手作業と大差ない生産性を確保できたという。

共通仕様の多いセルシステムを

経済産業省の大星光弘ロボット政策室長

 多くの産業で人手不足への対応や生産性の向上、新型コロナウイルス禍の非接触を実現するために、ロボットの導入が期待されている。

 特に惣菜製造の工場では、食材を弁当や容器に盛り付ける工程に最も多くの人手が必要となる。ただ、ロボットの導入は、多品種少量生産かつ同じ生産ライン上での生産物の切り替えの多さや、それらに対応する開発費用も含めた初期コストの多さ、メンテナンスできる人員の不足などで進まなかった。

 そこで経産省ではロボフレ事業を推し進める。同業界向けには「盛り付け工程の自動化」と「出荷工程の自動化」が重要で、そのためにロボットやロボットシステムのサプライヤーと惣菜製造事業者の協力が不可欠と呼び掛ける。
 総菜製造事業者には、ロボットが扱いやすいような惣菜商品の開発や、人とロボットが協働できる勤務シフトの導入を促す。
 一方、サプライヤー側には廉価で扱いやすいロボットシステムの実現のために、システムのパッケージ化などを求めていく。
 
 経済産業省製造産業局産業機械課の大星光弘ロボット政策室長は「従来のような一品一様のロボットシステムでなく、共通仕様のあるセルパッケージで普及させたい。そうすると、システムを量産でき、コストメリットとメンテナンスのしやすさを両立できる。食品業界にロボットが普及するきっかけにしたい」と話す。

(ロボットダイジェスト編集部 西塚将喜)





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