溶接ロボットに軸足を置き、周辺領域を開拓【前編】/ダイヘン金子健太郎常務執行役員
溶接を中心に事業領域を拡大
――溶接以外のロボットにも力を入れる理由は。 溶接以外の使い方も増えていますが、軸足はこれまで通り溶接にあります。ただ、工場では溶接だけをしているわけではありません。研磨や検査、各種搬送などのニーズもあります。従来はシステムごとに異なるロボットメーカーやSIerが携わっていましたが、統一できれば使いやすいはず。溶接を中心にしながら、周辺の工程や作業領域へのロボット導入にも対応していきたいと考えています。 ――システム構築の担い手は。 SIerは今も成長途中の業界で、事業として確立できている会社はそう多くありません。わが社は用途を想定してロボットを開発していますし、検査機器そのものは作れませんが一通りの周辺機器も社内で一貫生産しています。SIerとしての機能を持ちたい気持ちもありますし、SIerが溶接のロボットシステムを構築するときにも、わが社のロボットを選んでもらえるようにしたいですね。
自社工場を自動化の実験場に
――ロボットの生産拠点は。 部品の機械加工から出荷まで、ロボットの生産は全て神戸市の六甲事業所で行っています。六甲事業所ではロボット化や自動化、IT化を進め、生産効率を高める工夫をしています。特に、各種センサーを活用しロボットでロボットアームの組み立てや仕上げ、ピッキングをする工程は見ごたえがあります。単なるねじ締めだけではなく、モーターのかん合など精密な動作を求められる作業もロボットが担っています。部品やユニットを搬送する無人搬送車(AGV)や無人フォークリフト(AGF)が行きかっていますが、人との共存を実現しています。 ――そこでノウハウを蓄積している。 その通りです。用途に応じたパッケージ商品を開発するにも、われわれ自身にノウハウがなければ開発できません。自社工場の生産ラインはノウハウを蓄積するのにうってつけです。また、ロボットができる作業を多くのお客さまに見ていただける場でもあります。 ――六甲事業所には大規模なテクニカルセンター(TC)もあります。 六甲TCには、大規模な展示会並みの実演をいつでも体験してもらえる場を常設しています。6軸ロボットよりも密集してレイアウトされた7軸ロボットが、溶接対象物を自在にハンドリングする様子も展示しています。ショールームとしての機能の他に、お客さまのニーズに応じて溶接技術を開発する実験場としての機能もあります。実験結果を解析するためにハイスピードカメラや各種顕微鏡も備えています。さらに、溶接やロボット技術を学ぶスクールも開設しており、お客さまの多様なニーズに応える施設を目指しています。
――後編へ続く (ロボットダイジェスト編集部 松川裕希)