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2019.08.27

「単純作業の自動化」を使命に、取り出しロボットから物流、SIerへ【後編】/スター精機

パレタイジングロボットを開発

「商品説明会」で参考出展したパレタイジングロボット

 塩谷社長は「わが社の使命は、人がやっていた単純作業を自動化すること。人にはより付加価値の高い仕事に従事してもらいたい」と強調する。創業以来、その一心で取り出しロボットやFA装置などさまざまな自動化設備を製造し、顧客に提供してきた。

 現在は、取り出しロボットで長年培ったコア技術を生かし、新しい市場を開拓しようと模索する。
 その一つが物流だ。同社は19年6月11日~13日の3日間、本社工場内のショールームで「商品説明会」を開催し、直交型のパレタイジングロボット「PXW1410RVIA」を参考出展した。段ボール箱をパレット(荷台)に積むパレタイジング用のロボットを開発したのは今回が初めて。最大可搬質量は20kgで、会場では10kgの段ボール箱を搬送するデモを披露し、来場者の注目を集めた。

 「取り出しロボットの構造は一般的には直交型だ。直交の構造自体は、何も取り出しロボットだけではなくさまざまな分野の自動化に活用できる」と塩谷社長は強調する。
この考えの下、物流現場の中でも特に人手がかかるパレタイジングの工程を自動化するべく、パレタイジングロボットを独自に開発した。

取り出しロボットを核としたIoTシステム

スター精機が開発を進める稼働監視システム「リーネットアイ」

 最近はモノのインターネット(IoT)技術を使った稼働監視システム「Leanet-i(リーネットアイ)」の開発にも取り組む。

 リーネットアイは、取り出しロボットの稼働状況を可視化するシステムだ。射出成形機や温度調整機などとも接続でき、これらの設備の稼働状況も一括で管理できる。稼働状況を正確に把握し、適切な改善をすることで設備の稼働率を高め、生産性を向上し、顧客の収益アップに貢献する狙いだ。

 取り出しロボットメーカーの同社がIoTの旗振り役を担う意義はどこにあるのか?
 塩谷社長は「プラスチック製品が成形されるまでの工程なら、それが良品かどうかは射出成形機が判断できる。しかし、それが良品のまま、コンベヤーやコンテナに搬送されるかまでは射出成形機には分からない。良品の状態で製品を出荷するには、最終工程である取り出しと搬送を担う取り出しロボットが重要な役割を果たす」と説明する。

課題は人材の育成

「SIerの機能を強化したい」と語る塩谷社長

 塩谷社長は中長期的な自社の展望について「システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)としての機能を強化したい。取り出しロボットを中心としたロボットシステムを構築し、顧客の自動化ニーズに対応する」と話す。

 自社の取り出しロボットだけではなく、必要に応じて多関節ロボットや各種FA装置、画像検査装置なども組み合わせたロボットシステムを構築し、顧客に提供する考えだ。ロボットシステムを組むための専門の部署もこのほど立ち上げた。射出成形機の周辺の自動化システムに強みを持つSIerを目指す。
 顧客側からしても、同社に依頼すれば射出成形機周りの自動化システムの構築を一手に引き受けてもらえるため、メリットは非常に大きい。

 課題は人材の育成。SIerには幅広い知識が要求されるため、技術者を育て上げるには長い時間がかかる。塩谷社長は「教育には力を入れている。今後はロボットシステムを組む部署の体制をもっと強化しなければならない」と意気込む。

――終わり
(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)



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