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2019.04.12

インタビュー

バイスメーカーが提案する多品種少量生産の自動化とは【前編】/酒井正一ナベヤ常務

バイスの受注構造が変化

――1つの素材に1つのバイスが必要になるわけですね。
 一般的に1台のマシニングセンタ(MC)に対して、バイスは1~3台ほど購入されます。通常バイスは機械に固定したままで、そこに素材を付け替えるため、多く所持していなくても問題ありません。しかし、当社の提案する自動化システムは、素材をセットしたバイスを機械の外に多数用意し、バイスごと付け替えていくため、1台の機械にバイスが20、30個必要になることもあります。前ページの動画でも、複数バイスを用意して付け替えていることがお分かりいただけると思います。形状や種類の違う素材でもつかむバイスは共通のため、機械側の加工プログラムだけ変えておけば、ロボットの調整は必要ありません。バイスが大量にあるとストックする場所の間違いが起こりやすいですが、バイスにQRコードを付けカメラで確認するシステムを採用することで、配置ミスが発生しても誤った順番で素材を機械に取り付ける心配はなくなります。また、自社内だけの仕組みですが、ストックした台の下に重量センサーを付けることで、素材重量から何が置かれたのか分かる仕組みもあります。

――必要なバイスの数が増えます。
 自動化システムを始めた当初は、社内に説明しても「10、20個単位でバイスが売れるなんてありえない」との声もありました。しかし時代の変化により、人手が少なくても生産量を落とさないよう、長時間の機械稼動を求められるようになりました。そのための解決策がロボットなどによる無人加工です。すでに自動化システムを導入した顧客からは、10個単位での受注をもらっています。自動化提案は、これまでの加工方法を変えて、新しい市場を作る結果になりました。

  • 展示会で自動化を提案。多くの来場者が興味を示した

  • 展示会では実機も展示した

展示会で披露した自動化システムのイメージ

――自動化システムをパッケージ化するメリットは。
 どんなことができるのか、どうやって動くのか、どう組み合わせるのか。ロボットとバイスなどを組み合わせたユニットとして提案することで、導入した時のイメージが浮かびやすくなります。また、素材形状が変わってもシステムの仕組みは変わらないため、わずかなシステム変更で対応できます。専門のSIerに依頼せずにユーザー自身でシステム変更に対応できたり、依頼する場合でもSIerの手間を削減できます。より多くの企業の自動化をしてもらうためには、アフターサービスも担当するSIerが1つの企業にかかりきりになることは望ましくありません。また、製造業向けのシステムインテグレーションに慣れていないSIerでも「このシステムなら組むことができる」と思ってもらえる必要がありました。

――では、自動化システムを導入するコストや効果は?それを後編で伺えればと思います。

――後編へ続く
(聞き手・ロボットダイジェスト編集部 渡部隆寛)



酒井正一(さかい・しょういち)
1977年同志社大学化学工学科卒、78年岡本ナベヤグループ入社、2001年取締役新市場開発部長、11年常務。岐阜県出身の64歳。

関連記事:多品種少量生産の自動化は、バイスから変わる【後編】/酒井正一ナベヤ常務(4月15日アップ予定)

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