世界の猛者。ABBが食品分野に注力するワケ【その３】／ABB中島秀一郎ロボティクス事業部長
食品が得意なSIerは、本当に少ない
――食品業界が得意なSIerは多いですか。 少ないです。そこで当社ではSIer向けの講習も用意しています。ロボットシステムの構築方法だけではなく、お客さまからの依頼を受ける受けないの線引きや導入テストのやり方など、私たちのノウハウもお伝えします。またSIer企業の技術者の受け入れ教育も実施しています。秘密保持契約を締結したうえで数カ月間当社に常駐してもらい、当社の技術者と一緒に多様な動作テストを経験し、課題への対応力を養う活動です。 ――内容が充実していますね。 これらの活動で当社と意思疎通が容易にでき、一緒に作業できるSIerが増えれば幸いです。「お客さまにとって一番の提案は何か」と、ABBと同じ志で動けるパートナーが増えればとの思いがあります。前に関係者が「音楽バンドのような関係性ですね」と言っており、うまい例えだと思いました。私たちがロックバンドなのかフォークソングのグループなのかはさておいて、方向性が一緒ならば良い音楽を奏でられるでしょう。 ――食品業界でのSIerを考えた時、いま一番の課題は。 やはり絶対数の少なさです。食品工場は生鮮品を消費地に届けるため、全国各地に点在しています。それを網羅するサービス体制にするには圧倒的にSIerの数が足りていません。食品業界でのロボットの普及には、サービス網の構築も鍵でしょう。
比較的簡単な作業はユーザーで
――先ほどお話しされたもう一つ、お客さまへの指導の内容は。 ロボットシステムの運用時に欠かせない、比較的簡単な作業を指導しています。食品業界では製品の切り替えが多く、それに合わせてシステムの変更が必要です。例えば、先述したパッケージシステム「IRB 360フレックスピッカー」では画像センサーを使っており、対象物の外見が変わればセンサーは反応しません。新商品に対応させるには画像情報の再登録が要ります。その再登録など簡単な作業をお客さまが担うだけでも、メーカーの負担は大幅に軽くなります。動作プログラムの構築など高度な作業まで、お客さまがする必要はありません。そのためにパッケージ販売をしているのですから。 ――市場の自動化ニーズは高まっていますか。 自動化のニーズは高いです。これは食品業界に限った話ではないのですが、「人の代替でロボットを導入したい」との依頼がまだまだ多いです。作業員の動きをデータ化し、そのままロボットに再現させるのは技術面では可能でしょうが、汎用性などのロボットの良さを生かせるのかどうか疑問です。
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