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2019.02.21

インタビュー

世界の猛者。ABBが食品に注力するワケ【その2】/ABB中島秀一郎ロボティクス事業部長

産業用ロボット業界では、スイスのABB、ドイツのKUKA、日本のファナックと安川電機が世界4強メーカーとされる。その中でABBは食品分野にも積極的に参入する。日本法人の中島秀一郎ロボティクス事業部長は「世界4強の中で、当社は食品産業向けのノウハウが多い」という。【その2】ではアプリケーション・センター東日本での取り組みを中心に、食品分野での産業用ロボット活用の現状や、ABBが食品産業に注力する理由を聞いた。

食品向けに年間100件以上のテスト

食品分野での採用も多いパッケージシステム「IRB 360 フレックスピッカー」

――それではアプリケーション・センター東日本について、概要を教えてください。

 アプリケーション・センター東日本は東京都多摩市にあり、2014年6月に開設しました。主に食品分野向けにロボット動作の調整やハンドなど周辺機器の開発をします。食品関係だけでも年間100件以上のテストをしています。食品分野以外にも、協働ロボット「YuMi(ユーミィ)」を設置しており、こちらは電子機器の組み立てテストの依頼が多いです。

――食品業界では何を作る現場向けが多いですか。
 最近だと、冷凍食品やレトルト食品向けのシステムが多いです。冷凍食品の製造現場では低温下での作業になるため、本当に人手が集まらないと聞いています。また、弁当の盛り付け作業の依頼も増えています。

――そういった現場に対し、どのような提案を。
 パラレルリンクロボットで対象物を持ち上げる(ピッキング)作業の提案が多いです。当社は、ピッキング作業用のパラレルリンクロボットをパッケージで販売しています。「IRB 360 FlexPicker(フレックスピッカー)」です。組み立て式でカスタマイズできるアルミ製の骨組みにパラレルリンクロボット「フレックスピッカー」を取り付け、パソコンなどの制御機器や画像センサーを組み合わせました。

社員からのアイデアで付けた移動用キャスター

――具体的な活用法としては。
 対象物の整列や箱詰め、箱詰めの前段階の並べ替えでの活用が多いです。食品分野では製品の切り替えが多く、工場内のレイアウト変更が頻発します。そこでアルミの骨組みの足元にはキャスターを取り付けて移動を簡単にしました。キャスターを取り付けたのはお客さまの現場によく通う社員からのアイデアです。

――なるほど。
 またフレックスピッカーはモーターの取り付け位置が特殊です。取り付け部の構造は特許を取得しています。その構造で他社製品に比べてロボット本体の振動が少ないため、アルミ製の軽量な骨組みでも動作精度が下がるほどまでは骨組みが揺れません。

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