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2019.02.20

インタビュー

世界の猛者。ABBが食品に注力するワケ【その1】/ABB中島秀一郎ロボティクス事業部長

産業用ロボット業界では、スイスのABB、ドイツのKUKA、日本のファナックと安川電機が世界4強メーカーとされる。しかし日本では、ファナックや安川電機など国内メーカーの知名度が抜きんでており、海外メーカーの特徴や取り組みは意外に知られていない。ABBは2014年、東京都多摩市に「アプリケーション・センター東日本」を開設。ユーザーやシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)と協力して食品分野向けのロボット活用技術を開発する。今回は同センターで、食品分野に注力する理由をABB日本法人の中島秀一郎ロボティクス事業部長に伺った。

世界4強の一角ABBとは

スイスにあるABB本社

――まずは、貴社の概要について教えてください。
 ABBはスイスに本社のある産業機器メーカーです。1988年にスウェーデンの重電メーカー「アセア」とスイスの重電メーカー「ブラウンボベリ」の合併で誕生しました。前身企業の1つ、アセアは1890年に創設しており、130年近く技術革新を積み重ねています。世界屈指の多国籍企業として知られ、世界100カ国以上に14万7000人の従業員がいます。日本では1907年に前身企業が現在の横浜市内に事業所を設置しました。明治時代から110年超の歴史があります。

――日本法人の歴史も長いですね。では産業用ロボット事業について詳しく。
 当社は重工業や電力関連などを含め4つの事業本部があり、産業用ロボットを作るのはロボティクス&モーション事業本部です。ロボティクス事業だけでも53カ国で展開しており、世界中で産業用ロボットの活用事例があります。

――ロボット開発の歴史は。
 まず1969年に油圧式アクチュエーターを使った産業用ロボットを開発しました。74年に世界で初めて電動式産業用ロボットを商用化すると、85年にはレバーで操作するジョイスティックコントローラーを導入。また98年にパラレルリンクロボットを発売するなど世界のロボット技術をけん引してきました。近年では2000年代後半にロボットの遠隔操作システムを提供開始し、15年に協働ロボットのYuMi(ユーミィ)を発表しました。現在は多関節ロボットで可搬重量0.5kg~800kgと幅広く取りそろえています。

――豊富なラインアップの他に強みはありますか。
 私たちの一番の強みはロボットの単体売りではなく、システム構築やソフトウエアとの組み合わせなど、幅広い提案ができる点です。ロボットを一連のソリューション(顧客の課題を解決するためのシステム)の形にするのは一般的にはSIerの仕事ですが、時にはメーカーならではの視点を生かし、システム構築までを請け負います。そのような柔軟なスタンスの企業は多くはないでしょう。

――製品面では。
 ロボット本体だけでなく、ロボット周辺に置く搬送装置やロボットのハンド(グリッパー)などの関連機器を自社でも開発しています。また制御やシミュレーションのソフトも充実しており、ハードとソフトをより使いやすい組み合わせでSIerやエンドユーザーに納入します。

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