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2019.02.19
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[SIerを訪ねてvol.5]人とロボットの協調目指して【後編】/IDECファクトリーソリューションズ

特設サイトから問い合わせも

同社が2016年に開設したサイト「協働ロボット.com」

 同社がターゲットに見据えた市場は、食品産業や医薬品産業、化粧品産業など今後のロボット活用が期待される“三品産業”。特に食品産業向けの営業活動に力を注ぐ。  展示会の出展や商社との連携で顧客開拓に励む。この他、16年9月に開設したショールーム「協調安全ロボットテクニカルセンター」に加え、特設サイト「協働ロボット.com」(www.kyodo-robot.com)も有力な営業ツールだ。  「協働ロボットは“安全柵がなくても使える”との認識が独り歩きしている。だが、安全柵をなくすにはリスクアセスメントが必要。協働ロボットの正しい情報を多くの方に認識してもらいたい」(鈴木取締役)との思いで、17年8月に協働ロボット.comを立ち上げた。協働ロボットの基礎知識をはじめ、導入のメリットや必要な安全方策など、協働ロボットの情報が幅広く掲載されている。  「ページの閲覧数もメールマガジンの登録件数も順調に伸びている。サイトから問い合わせが来ることも増えた」と鈴木取締役は強調する。

人とロボットの協働作業を実現

「周辺機器まで考慮したシステム構築が難しかった」と振り返る鈴木正敏取締役

 協働ロボットシステムの導入実績も着実に伸びている。  例えば食品産業向けでは、コンビニ弁当の生産ラインに協働ロボットを導入した事例がある。ざるそばを盛り付けるラインで、従来は人が手作業で薬味やつゆの小袋を入れていた。だが、協働ロボットを使い、盛り付けの工程において人とロボットの協働作業を実現した。  鈴木取締役は「1日に生産するそばの数が多く、つゆなどの小袋は途中でなくなるため、定期的に補充する必要があった。補充のための周辺機器やその制御方法まで考慮したトータルのシステム構築が難しかった」と振り返る。  また、自動車産業向けでは、樹脂の成形品(熱で溶かした樹脂を金型に入れ、冷やして固めて作った製品)の組み付け工程を協働ロボットで自動化した実績がある。もともとはジグと呼ばれる補助器具を使って人が組み付け作業をしていた。しかし、協働ロボットを人の腕のように双腕仕様にし、ビジョンセンサーを使ってロボットの位置を補正することでジグを不要にし、人の作業を協働ロボットに置き換えたという。

金属加工向けのパッケージ製品も

JIMTOF2018で披露した「マシンテンディングシステム」のサンプル

 現状では、売り上げ全体に占めるロボット事業の比率は大きくない。  だが、同社はロボット事業の売り上げを20年までに現状の3倍以上に引き上げ、自社の売り上げを底上げする計画を立てる。  売り上げの拡大を実現するには、既存顧客の深耕に加え新規顧客の開拓も欠かせない。その中で、鈴木取締役が期待を寄せるのが「金属加工を手掛ける企業」だ。  金属加工には工作機械が使われる。そこで同社は、工作機械に材料を投入する作業を自動化するパッケージ製品「マシンテンディングシステム」をこのほど開発した。18年11月に東京都江東区の東京ビッグサイトで開かれた工作機械見本市「第29回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2018)」では、工作機械商社の兼松KGK(東京都練馬区、千葉靖雄社長)の小間でマシンテンディングシステムを披露し、多くの来場者の注目を集めた。

安全に協調できるシステムを

 一方で、課題も多い。前編でも触れたが、現状でロボット事業に携わるのは12人。限られたメンバーで、協働ロボットを使った自動化のニーズに応え事業を拡大し続けるには、いかに効率的にロボットシステムを構築するかが引き続き求められる。  そのため、簡単に自動化システムを導入できるパッケージ製品の拡販に今後も注力する考え。また最近は、システム構築の効率化を実現する、人工知能(AI)を活用した汎用的なロボットコントローラーの開発にも取り組む。

 最後に「SIerとしての使命は?」との質問を投げると、鈴木取締役は「IDECでは『協調安全』を提唱する。グループ全体で、人とロボットが安全に協調できるシステムを実現したい」と力強く返した。  協働ロボットを中心に、同社は今後も人とロボットの協調を追い続ける。

――終わり (ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)

関連記事:[SIerを訪ねてvol.5]/人とロボットの協調目指して【前編】/IDECファクトリーソリューションズ

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