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2018.12.12

連載

[注目製品PickUp!Vol.4]こんな構造見たことない、狭い空間を縦に使う【前編】/セイコーエプソン 「Nシリーズ」

反対方向に最短経路で

セイコーエプソン提供

 アームを完全に折りたたんでも根元と肘がぶつからない形状で、関節が片持ち構造のため、第二関節をどの角度にも自在に動かせる。
 アームを逆方向に持っていきたい時、通常はアーム全体を水平に180度回転させる。しかしNシリーズなら、腕を引っ込めてそのまま逆方向に突き出す動作が可能だ。最短経路のためこちらのほうが速い。

「独自技術で精密作業を可能にした」と吉田佳史執行役員

 関節が片持ち構造でアームが長いため、両持ち構造のCシリーズなどと比べて剛性(負荷がかかった時の変形のしにくさ)の確保や振動抑制は難しいが、時計など精密機器産業で長年培った独自の制御技術や補正技術を駆使してこの課題を解決した。
「この構造で基盤の組み立てなどの精密作業ができるのは、当社の技術があってこそ」と吉田執行役員は自信を見せる。

上から下まで空間を有効活用

省スペースで設置でき、人からの置き換えもしやすい

 N2の設置所要面積は安全カバーを含めて600×600mm。「人からの置き換えを考え、人の肩幅と同じくらいにした」(吉田執行役員)。
 N6の所要面積は1100×1100mm。アーム長さが同程度のロボットと比べ、所要面積を75%削減できる。N2は天つり、N6は天つりと床置きのどちらでも使用できる。

 通常の産業用ロボットは、アームの根元付近では作業がしにくい。そのため、棚から物を取る作業をロボットにさせる場合、アームの長さに応じてロボットから少し離れた場所に棚を設置するのが一般的だ。

棚のすぐ前に置け、上段も下段も有効活用できる

 しかしNシリーズなら、アームを折りたたむことで根元付近でも作業できる。棚をロボットのすぐ前に設置できるため、棚まで含めたシステム全体の設置面積を大幅に削減できる。
 また、棚が近くにあるとアーム長を最大限に縦方向に使えるため、通常より高いところまで棚として活用できる。「N6」のアームは1000mmだが、一般的な構造の1400mmのロボットと同等程度の高さまで手が届く。

 「Nシリーズは通常の産業用ロボットとも、人の腕とも違う構造。どう使えばいいのか最初はイメージしにくいかもしれないが、実際の動作や活用例を見ていただければ魅力は分かってもらえる」と吉田執行役員は語る。

 後編では、Nシリーズの特徴を生かした使い方を紹介。「非常に狭い空間で複数の工程をこなせるので、驚く人も多い」(吉田執行役員)。

――続く


(ロボットダイジェスト編集部)



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