2021.03.04
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[特集 物流機器は新世代へvol.9]いよいよ開幕! IoTやAI、ロボティクスに期待/日本ロジスティクスシステム協会 寺田大泉常務理事

物流の5つの勘所

「物流は経済活動に欠かせない重要な産業だが、数多くの課題も抱える」とJILSの寺田大泉常務理事

――展示会には課題解決に役立つ製品や技術が数多く展示されそうですが、物流業界の現状と課題とは?  物流はわれわれの生活や産業、経済活動に欠かせない重要な産業ですが、数多くの課題も抱えています。人手不足が深刻で、トラックドライバーや倉庫で働く作業者が全く足りていません。二酸化炭素(CO2)の削減といった環境問題への対応も求められます。また、物流業界は裾野が広く、荷物を送る荷主や受け取り手、その間をつなぐ運送会社など、さまざまな企業や団体が関連します。それぞれの企業や団体がうまく連携できれば理想ですが、全体の効率化がなかなか進んでいないのが実情です。例えば、わが国全体における輸送効率を見る指標に「ロードファクター」があります。営業用トラックが荷物をどれぐらい積載しているかを示すものですが、年々減少傾向にあり今では40%を下回っています。大雑把に言えば、道路を走る営業用トラックの約60%は空気を運んでいるようなイメージです。 ――そもそも、なぜ効率化が進んでいないのでしょうか?  私見ですが、物流業務には大きく①見せる②そろえる③まとめる④ならす⑤減らす――の5つの勘所があります。この5つがうまく機能していないため、物流業界の効率化が進んでいないと考えています。①の「見せる」だと、「どこに何があるのか」「どこからどこまで運ぶのか」などの情報を可視化できるかどうかが、効率化へとつながります。また、②の「そろえる」は標準化とも言い換えられるでしょう。輸送時に使う段ボール一つ取っても、サイズやロットの単位がそろっていれば自動化や機械化がしやすいですが、現状はそうではありません。④の「ならす」も自動化に関連します。物流の大敵は変動で、いかに輸送量をならすかが大事です。例えば、玩具は季節によって需要が大きく変わりますが、それに伴い輸送量も変動します。その幅が大きいほど自動化や機械化への投資には工夫が必要になります。

今回展も物流業界の課題を解決する展示が数多く見られそうだ(写真は前回展)

――コロナ禍は物流業界にどのような影響や変化をもたらしますか?  まず、コロナ禍の大変な状況でも物流を止めないことが何よりも大事です。それを実現するには深刻な人手不足や感染防止への対応が急務で、今後は省人化や省力化、そして非接触化がますます重要になります。こうした課題を解決する上では、デジタル技術やロボティクス技術が大きな鍵を握ります。今回のコロナ禍だけではなく、それ以降も持続可能な社会を実現するためには、これらの技術の導入をより推進すると同時に、これらの技術を使いこなす人材も育成していく必要があります。 ――展示会では省人化や省力化、非接触化の課題を解決する提案にも期待できそうですね。最後に来場者に向けて一言、メッセージをお願いします。  コロナ禍の状況だからこそ、物流に関して何らかの課題を持つ来場者と、それに対するソリューションを提供する出展者の間をつなぐ場が大切になると考えています。「行って良かった」と思ってもらえるよう全力で会場運営に当たりますので、ぜひとも多くの方に来場いただきたいです。また、会場に足を運べない方はバーチャル物流展を見学していただき、今後の企業活動に役立ててほしいです。

(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)

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