• インタビュー
2020.05.20
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オープン化時代に使いやすい汎用コントローラーを【後編】/KEBA Japan村上正和社長インタビュー

脱「ブラックボックス」へ

「10年先を見据えて開発コンセプトを作り込む」と村上正和社長

――なるほど。  それならば「陳腐化した部分を改善すればよいのでは」というのが一般的な考え方です。しかしシステム設計でよくある話なのですが、構築した担当者以外が見ると、全く分からない構造になっている。下手に変えたらシステム全体に狂いが生じる。結局、下層は変えずに付け焼刃のような修繕しかできない。ですので、日本ではロボットコントローラーをよく「ブラックボックス」と言っていました。そのブラックボックスを使った開発が、限界を迎えたのが2000年代や2010年代なのではないか、と考えています。 ――そこで、汎用性の高いコントローラーに注目が集まった。  欧州の開発思想は積み重ねではなく、コンセプトを作りこんで軸を作り、その周りにアイデアを付加していくようなイメージです。KEBAも10年先のデジタル技術の発展を見据えてコンセプトを作り込んでいます。例えば、今後はモノのインターネット(IoT)や人工知能(AI)技術の活用は当たり前になるでしょう。そこで、各種通信規格に対応したり、現場に近い所でデータを処理するエッジコンピューティング処理を付加できる機種を開発しています。また、ロボット以外のさまざまな産業機器を制御するプログラマブルロジックコントローラー(PLC)のようにも使える。ですので、製造ライン全体の制御装置として、システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)や大手企業の生産技術部門の方にも提案していけたらと、考えています。

国際ロボット展の会場では、ソフトウエア開発の強化もアピール

――今後の見通しをお教えください。  わが社は相手先ブランドによる生産(OEM)が主体です。認知度向上まで時間が掛かりましたが、少しずつ日本のロボット業界でも知られる存在になってきた、と手応えを感じています。既に共同での製品開発が始まっています。ただ、コントローラーはロボット動作の核となる部分ですから、開発着手から製品になるまでには時間が掛かる。種まきから製品の売り上げにつながるまで、早くとも2、3年は掛かるでしょう。 ――新型コロナウイルスの感染拡大の影響は出ていますか。  新型コロナウイルスによる景気停滞は心配です。しかし、ロボットメーカーの開発は止まっていません。緊急事態宣言の発令期間中も、直接はできませんが、開発のサポートをテレビ電話などで継続していました。中長期で見れば、わが社にとって日本市場は大きな希望です。やはり世界を見渡しても、ロボット本体の特にハード面などに関しては、日本のメーカーの実力が抜きんでていると思います。日本のロボット業界のさらなる発展に少しでも貢献できれば幸いです。

(ロボットダイジェスト編集部 西塚将喜)

村上正和(むらかみ・まさかず) 1996年関西大学工学部卒。設備メーカーや外資系産業用ロボットメーカーの日本法人を経て、2015年にKEBA Japan入社。16年より現職。1973年大阪府出身の47歳。

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