[創刊特別対談]石井孝裕ロボット政策室長×久保田和雄SIer協会会長【前編】
中小企業が多いSIerを支援
司会 今年の7月にはFA・ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会)が設立されました。 久保田 SIerは中小企業が多く、100人未満の企業が6割超を占めます。1社では難しい課題の解決に、業界を挙げて取り組めればと思います。SIer協会の取り組みの柱となるのは、「①ネットワークの構築」「②事業基盤の強化」「③専門技術の高度化」の3つです。ネットワークの構築では、SIer同士で互いの得意分野や担える業務領域を把握できるようにします。中小企業でもネットワークがあればチームで大規模案件に対応できます。事業基盤の強化では、報酬を完成後に一括払いではなく、契約時など何段階かに分けてもらう方式を浸透させたいと考えています。技術の高度化では、手戻りなく工程管理するための手法が「導入プロセス標準(RIPS)」としてすでにありますが、これをSIer協会としてさらに進化させて普及させたいと思います。
「SIerって格好良い」を目指して
司会 SIerへの期待が高まる一方で、その数が足りないとも聞きます。 石井 その通りで、「日本再興戦略2016」ではSIerを3万人にすることを掲げました。現在は、2万人程度といった調査もあり、足りません。 久保田 人材確保のためには、まずはSIerの認知度を高めることが重要です。現状では、SIerという呼び方さえまだまだ一般的ではありません。子どもが学校で「うちのお父さんはロボットのSIerなんだよ」と言っても周囲の子には通じないと思います。これを「君のお父さんはロボットSIerなんだ。格好良いね!」と言ってもらえるようになることが理想です。 石井 私もSIerの認知度の向上が必要だと考えています。SIerは、現状、顧客が選んだロボットでシステムを構築する、いわば裏方のような存在です。先ほどもお話したとおり、ハウスメーカーが顧客のライフスタイルに合わせて最適な家を提案するように、その企業の製造現場に最適なロボットシステムを提案し、提供するのはSIerです。その役割は極めて重要です。