2018.12.17
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[SIerを訪ねてvol.3]生産ライン全体まで踏み込んだ構築を【前編】/豊電子工業

工法から一緒になって開発

 SIerの仕事と言えば、作業に合わせたハンドを開発し、決められた工程にロボットを配置。その後、動作をプログラムして、安全柵などの安全装置を設置するといった流れが一般的だ。  同社でもそうした仕事はあるが、加工法の開発から依頼されるケースも多いという。  開発事例の一つが、ロボットによるレーザー焼き入れシステムだ。材料の搬入から焼き入れ、搬出までの自動化を提案する。  ロボットと2軸のポジショナー(加工しやすいように対象物の位置や姿勢を調整する機器)で構成。ロボットにレーザーユニットを取り付けた汎用型と、ロボットがワークをつかんでレーザーヘッドにかざす量産型の2種類をラインアップする。  汎用型はさまざまな対象物を焼き入れするシステムに適しており、量産型は同一の対象物を連続で量産するシステムに適している。  レーザーユニットの近くには、非接触で温度を測れる放射温度計を装着。リアルタイムに焼き入れ温度を監視し、一定に制御する「温度フィードバック制御」ができる。  また、レーザー出力の波形から、焼き入れ不良を発見できる機能も搭載する。

ラボを開設し、加工品質を確保

ラボにはレーザー焼き入れシステムを常設する

 レーザー焼き入れは熱処理の業界ではまだまだ新しい手法で、取り入れることにいまだ消極的な企業も多い。理由の1つに、レーザー焼き入れを評価する機関が少ないことが挙げられる。  そこで、自社の工場内にレーザー焼き入れロボットシステムを常設する実験施設(ラボ)を開設した。  顧客から部品サンプルを受け取って焼き入れテストを実施し、最適な焼き入れ条件を探る。形状、材料の違いで条件が変わるため、光学顕微鏡や硬度測定機を使って、条件ごとの品質を確認する。

 ラボで顧客の部品に適した焼き入れ条件を導き出せてはじめて、それを組み込んだ自動化システムを提案。顧客へシステムを納入する。  「SIerで測定まで自社でできるところはない」とラボを担当する技術開発部の小正大樹さんは話す。顧客からは「ここまでやっているのか」と驚かれることもあるという。  同社では今後も、顧客の加工工程にまで1歩も2歩も踏み込んだ自動化システムの構築に挑戦する考えだ。

光学顕微鏡や硬度測定機を設備し、自社で測定
「自社でここまで出来るSIerはない」と技術開発部の小正大樹さん

――後編へ続く

(ロボットダイジェスト編集部)

関連記事:[SIerを訪ねてvol.3]生産ライン全体まで踏み込んだ構築を【後編】/豊電子工業(12月18日アップ予定)

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