生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2018.12.18

連載

[SIerを訪ねてvol.3]生産ライン全体まで踏み込んだ構築を【後編】/豊電子工業

本連載3回目はシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)大手の豊電子工業(愛知県刈谷市、盛田高史社長)を訪ねた。1981年からSIerとして活躍する同社は、国内だけでなく北南米、アジア、欧州と世界中に活躍の場を広げる。産業用ロボットが注目される中、技術開発の部門に力を入れ、ロボットだけでなく要素技術の知見も深める。そしてロボット単体のシステムだけでなく、生産ライン全体を構築するラインビルディングを請け負う「メガインテグレーター」を目指す。

部品から電気・電子、そしてロボットへ

 創業者の盛田豊一会長は1964年、22歳の時に自動車部品のコイル加工をする豊工業所(現豊電子工業)を設立した。68年には「電気の時代」と配電盤事業を開始。さらに77年には電子事業部を開設し、翌年社名を現在の豊電子工業に改称した。当時はアーケードゲームなどの基盤を手掛けたという。
 
 さらに自社ブランドの立ち上げを目指し、産業用ロボットの開発に挑んだ。
 しかしそのころにはすでに大手のロボットメーカーがあり、中小企業がゼロから開発して市場を開拓することは難しかった。そんな時、取引先の工場に置かれたロボットがうまく動いていないのを見つけた。 
「ロボットの製造ではなく、ロボットを使ってシステムを組むエンジニアリングの分野ではニーズがあるのでは」と考え、当時社長だった盛田会長が足を運んだのがファナックだった。

 当時はメーカー直販が当たり前の時代。システムも全てメーカー自身が組んでおり、外部にエンジニアリングを頼むことはなかった。諦めず交渉を続けて1年が過ぎた81年、ついにファナック製ロボットの販売と、システム構築のための周辺機器の製造の契約を結ぶことができた。

 エンジニアリング会社として活動を開始した当初は、利益につながりにくい仕事ばかり。しかし、そこで得た経験を生かし、80年代後半にはソニーのブラウン管を製造する工場のロボットシステムを受注できた。1ラインでロボット30~40台。国内外合わせて500台ほどの仕事だった。それをきっかけに、自動車メーカーからも受注できるようになった。

受け身のSIerからの脱却

「これからは受け身ではダメ」と盛田社長

「これからは受け身ではダメ」と盛田社長。
 SIerは顧客からの依頼を受けてシステムを組むため、受け身になりがちだ。しかし「本当にお客さまが困っていることを見抜き、その解決策をこちらから提案しなければ、仕事は来なくなる」と言う。
 積極的な海外展開や、SIerとしての知見を基にメーカーに製品の改善点をフィードバックすることも、顧客への解決提案を充実させるためだ。

 さらに、ロボットだけでなく、生産ライン全体を構築するラインビルディングも手掛ける。
「欧州ではシステムメーカーが機械まで含めて一括で生産ラインを受注し、全体最適化を図った上で提供する『メガインテグレーター』が存在する。これからはうちも、そうした企業を目指したい」と盛田社長は意気込む。メガインテグレーターとなるために国内拠点の拡充を図っており、来年度中には新工場を建設する。機械とロボットなどを組み合わせた提案を強化するため、ショールームも設置する。

 また安全柵の必要ない協働ロボットの提案もこれから重要になると言う。部品加工メーカーからは「受注は好調で増産したいが、今後も引き続き仕事があるかは分からない。だから設備は増やさずに生産性を高めたい」との声が強いという。こうした願いに応えられるのが協働ロボットだ。
 作業者が現場を離れる時に代わりに協働ロボットを稼働させておけば、機械の台数を増やさなくても生産効率は向上する。就業時間だけでなく、夜間も稼働させれば、生産量はさらに増やせる。豊電子工業ではすでに20台ほどの実績がある。
「全部を自動化する必要はなく、人間が作業しない時間だけでもカバーできれば、生産性は上がる。協働ロボットはまだ黎明(れいめい)期で導入する企業は少ないが、これからもっと性能が上がり、使い手側の知見が蓄積されれば導入は増える」と盛田社長は予想する。

TOP