[SIerを訪ねて vol.26]容器搬送の技術生かして新規取り込む/エヌテック
重筋作業を自動化
同社が手掛ける各種容器の搬送システムには、ロボットが組み込まれることも多い。 最近では、ペットボトル用のキャップを自動供給するロボットシステムをある容器メーカーに納めた。ロボットと各種専用装置でシステムが構成されており、まずはコンベヤー上を流れる段ボール箱にカッターを当てて開封し、キャップの入った内袋を取り出す。内袋からキャップを抜き取って段ボール箱にしまった後、ロボットがキャップ入りの段ボール箱を専用設備に供給する仕組みだ。空になった段ボール箱を折りたたむ作業もロボットで自動化した。山田次長は「従来は人がキャップを設備に供給しており、相当な重筋作業だった」と述べる。 また、段ボール箱をロボットで積み上げるパレタイジングシステムや、積み下ろすデパレタイジングシステムの納入実績も豊富で、サイズが異なる複数の段ボール箱を対象とした「ランダムパレ・デパレタイザー」も新たに開発した。段ボール箱の形状認識に人工知能(AI)を使っており、段ボール箱のサイズが変わっても自動で認識できる。3Dビジョンセンサーを扱う上で欠かせない品種登録の作業を不要にしたのが大きな特徴だ。
最近は食品業界などの開拓を目指し、粉末が入った紙袋を積み下ろすデパレタイジングシステムの提案にも力を注ぐ。紙袋にはしわができるため形状が変わりやすく、従来のビジョンセンサーでは認識するのが困難だった。そこで、同社はAIを活用して紙袋の形状を学習させることで、紙袋を正確に認識できるよう工夫した。「紙袋は20~30kg近くある。今まではそれを人が担いでタンクに粉末を供給していただけに、自動化のニーズは大きかった」と山田次長は言う。 加えて、段ボール箱を開梱するロボットシステムも手掛ける。3Dビジョンセンサーで段ボール箱の形状を認識し、専用のカッターを持たせたロボットが段ボール箱の天面に沿って一周カットする仕組みだ。「コ」の字状に3辺をカットすることもできる。 食品工場では作業者が段ボール箱を開梱しており、同社はロボットシステムを通じて人手作業の置き換えを促す。
引き合い増えたが価格競争も
同社は日本ロボット工業会に2016年に加盟し、ロボットシステムの提案を強化する姿勢を対外的に示した。「国際ロボット展」だけではなく、食品機械の専門展「FOOMA JAPAN」やロボット専門展「ロボットテクノロジージャパン2022」などにも出展し、幅広い業界に自社の技術をアピールする。 「単にロボットで物を搬送するだけでは競合のSIerと差別化できない。わが社には検査装置を開発する専門部署があるため、ビジョンセンサーやAI技術を生かしたロボットシステムを提案したい」と山田次長は意気込む。 足元では引き合いが増えつつあるが、競合との価格競争も激しくなったという。それだけに、今後はコスト競争力の高いロボットシステムをいかに提案できるかが新規開拓の鍵を握る。大窪本部長は「ビジョンセンサーやAI技術は差別化の要素になるが、トータルコストも上がる。顧客の要望があれば既製品も使用するが、わが社はわが社でより安価な画像処理システムを独自に開発したい」と述べる。
(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)