小回りの良さに強み、オーダーメードでAGVの“足”作る/シーシーアイ
壊れないことが大前提
主要なAGVメーカーとの取引実績も豊富で、同社はAGVの設計段階から入り込んでニーズに合ったウレタン車輪を提案する。 営業部営業グループの藤田一輔グループマネージャーは「例えば、半導体を製造するクリーンルーム向けのAGVであれば、摩耗しても粉塵(じん)が出にくいウレタン車輪が求められる。AGVはさまざまな環境で使用されるためウレタン車輪への要望も多岐にわたるが、大前提として壊れないことが重要」と話す。 ウレタン車輪が故障する最大の要因は、ウレタンの剝離だという。ウレタン車輪は主に熱硬化性ウレタンと、芯金と呼ばれる金属部品で構成される。ウレタンが芯金から剝がれると、芯金の回転がウレタンまで伝達されずにAGVが停止してしまう。「生産ラインや物流現場に与える影響も大きいだけに、どのAGVメーカーも剝離には頭を抱えている」と林営業部長は述べる。 これに対し、同社は化学メーカーとして長年培ってきた熱硬化性ウレタンの接着技術を武器に、ウレタンが芯金から剝がれにくい高耐久な車輪を製造できるのが売りだ。「壊れない車輪」の製造技術と、さまざまなのニーズにきめ細やかに対応できる小回りの良さを車の両輪に据えて競合他社との差別化を狙う。
高付加価値路線にかじを切る
同社がウレタン車輪を初めて販売したのは1970年と今から50年以上前にさかのぼる。当初は事務机用のキャスター車輪をメインに事業を展開していたが、その後グローバル化の進展と合わせて中国製の安価なキャスター車輪が市場に流入してきた。 価格競争では勝てない――。そう考えた同社は、キャスター車輪の製造で培った技術を生かして高付加価値路線にかじを切った。市場調査も並行し、高付加価値なウレタン車輪を適用できる一つの分野として目を付けたのがAGVだった。 AGVの需要拡大と合わせ、最近はウレタン車輪の引き合いも増加傾向にある。林営業部長は「剝離に悩むAGVメーカーから声が掛かる機会が多くなった」と説明する。 また、新規顧客の開拓を目指し、展示会でのPR活動にも力を注ぐ。直近では今年9月に東京都で開催された「国際物流総合展2022」に出展し、AGVや自動倉庫向けのウレタン車輪を幅広い来場者にアピールした。 藤田グループマネージャーは「将来的には熱硬化性ウレタンの製造技術を車輪製造以外の領域に応用したい。産業用ロボット業界などにもわが社のノウハウが生かせれば」と話す。
(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)