日本法人のファンを作る【前編】/ABB中島秀一郎社長
日本人社長のメリット生かす
――9月に社長に就任され、変化したことはありますか? スイス本社との打ち合わせの際、国内のロボット事業の業績や業界動向だけでなく、日本のマクロ経済の見通しについても説明する必要があり、「立場が変わると視点が変わり、視野も変わる」と実感しました。ですが、ABBでは各事業部ごとに責任の所在を明確化しているため、「業績に対し責任を負う」という意味では事業本部長時代からあまり変わりません。日本法人の社長に日本人が就任するのは久しぶりです。日本の顧客や協業相手に「日本語で直接話ができ、顔も覚えてもらいやすい」というメリットを生かせればと思っています。また、生え抜きで社内のことも把握しているので、社員のエンゲージメント(企業と社員との信頼関係、会社への愛着など)向上も図りたいと考えています。 ――中島社長の「座右の銘」は何ですか? 「一点突破、全面展開」をモットーにしています。ABBは世界全体で見れば大きい企業ですが、日本法人だけ見れば規模は大きくありません。日本には大手ロボットメーカーが複数ありますから、例えば営業マンの人数では太刀打ちできません。そこで、数に頼る営業展開はせず、まずは「一点突破」で選ばれることを目指します。その1回で高い評価を得られれば、継続的な取引につながります。新入社員には「毎日が桶狭間」と話しています。桶狭間の戦いでは、今川義元の大軍に、数で劣る織田信長の軍が奇襲をかけ、大逆転を起こしました。ロボット業界でも、戦い方次第で「少ない人数でも勝てる」と考えています。 ――ありがとうございます。後編では「どのように1点突破を目指すのか」など、新社長としての具体的な方針についてお聞きしたいと思います。
(聞き手・ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)
中島秀一郎(なかじま・しゅういちろう) 1998年東京大学大学院工学系研究科修了、ABB入社。2013年から塗装機事業統括部長として、日本国内をはじめ、欧州、中国、中近東、米州で、新規事業の立ち上げや既存事業の立て直しなど幅広い業務を経験。15年から国内のロボティクス事業を統括、19年ロボティクス&ディスクリート・オートメーション事業本部長に就任。20年9月から現職。東京都出身の49歳。 関連記事:日本法人のファンを作る【後編】/ABB中島秀一郎社長