[SIerを訪ねてvol.11]作業者の立場から生まれる自動車向けロボットシステムを【前編】/アスカ
始まりはユニロボから
ロボットのシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)として活動するのは1986年から。自社の自動化を進めるために始め、ノウハウを蓄積し外販するまでになった。ただし立ち上げのきっかけは「システムを組む」ことではなく「ロボットの開発」だった。 縦横など直線的に動く直交座標型ロボット「UNI-ROBO(ユニロボ)シリーズ」を開発。その先端に溶接機を取り付け、自動で作業する溶接システムを提案していたという。 「当時は垂直多関節ロボットが高価だったため直交座標型の溶接システムが重宝され、多い時では年100台出たこともある」と福西健哲営業課長は話す。配電盤事業で培った技術や知識が、サーボモーターのコントローラーや基板作りに生かされた。 垂直多関節ロボットの普及に伴い、20年ほど前から垂直多関節ロボットを使った自動化システムの構築も手がけるようになった。 自社で自動車部品加工の事業部を持つこともあり、どの作業が負担になるか、ボトルネックになるかを、作業者目線で把握できる。そのため、自動車産業向けのロボットシステムが得意で、受注も多い。 現在はロボットシステム事業部の9割ほどの売り上げを自動車向けが占めるという。自動車向けシステムの構築で培ったノウハウを転用し、今後は他の産業からの引き合いの獲得にも積極的に取り組む考えだ。16年ごろからは、これまで関わりのなかった企業から、少子化や作業者不足を理由に、検査、組み立て工程の自動化を依頼されることが増えつつある。 「これからも自動車産業が柱なのに変わりはない。ただ、自動車以外の産業からの引き合いも増やし、将来的には売り上げの3割ほどまで押し上げたい」と福西課長は意気込む。
工場スペースを広くすることで、生産力に余裕を
アスカの強みは、3つの事業部があるからこその豊富な人材とノウハウだ。自動車部品加工から得られる現場の困りごとをいち早く知り、システムにフィードバックしたり、コントローラーの製造に必要な電気関連の知識やノウハウを配電盤事業で養える。 システム設計や電気、機械、組み付けなど、ロボットシステムに必要な知識、技能を自社でまかなえるため、設計から設置作業まで一貫して請け負える。また米国と中国に拠点を持ち、海外の仕事を請け負うこともできる。
国内だけでなく、世界中からの依頼に応えるには「より大きな工場スペースが必要」と福西課長。納期の短い案件でも3、4カ月かかり、長いものでは1年近くかかる。1つの案件で数十もの設備が使われることも。工場スペースの余裕がなければ、仕事を引き受けられない期間ができる。 ロボットシステム事業部がある愛知県豊田市の豊田工場は幅30×奥行き90m。さらに、17年に愛知県高浜市に完成した配電盤事業部の工場の一部、幅60×奥行き90mのスペースをロボットシステム用にすることで作業スペースを確保した。 現在、3、4カ月の短納期の設備は豊田工場。主に海外向けの期間の長いものを高浜工場で組み立てている。「十分な工場スペースを確保したことで、お客さまからの注文を柔軟に引き受けられるようになった」と福西課長は強調する。 また工場内に産業用ロボットを置き、ロボットを使うユーザー向けの「アスカロボットアカデミー」を開催するなど、教育体制やサポート面の強化にも力を入れている。同社の充実したサポートやサービス体制については、後編で。
(ロボットダイジェスト編集部 渡部隆寛)